京大の「特色入試」に見る国の「高大接続」改革-渡辺敦司-

2015(平成27)年度大学入試は、国立大学で出願が行われています。ところで大学入試をめぐっては2014〈平成26〉年12月、中央教育審議会が「高大接続」に関する答申をまとめ、現行の大学入試センター試験を「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に衣替えするなどの<大改革>を行おうとしていることは、これまでにも繰り返しお伝えしてきたとおりです。また、2016(平成28)年度に導入が予定されている東京大学の「推薦入試」京都大学の「特色入試」が実質的にその先取りであることも、折に触れて紹介してきました。このうち京大の特色入試に関しては昨年末、選抜要項(予告)<外部のPDFにリンク>が発表されました。改めて何が先取りなのか、詳しく見ていきましょう。

京大の「特色入試」に見る国の「高大接続」改革-渡辺敦司-


特色入試は学部によって「学力型AO」型、「推薦」型、「後期日程」型があり、日程もセンター試験以外は2015(平成27)年中に終えるものから年明けに出願を開始するものまで異なっています。ただ、中教審答申でも「一般入試、推薦入試、AO入試の区分を廃止」することを提言しています。京大の場合も、名称は違っても要は各学部のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)によりふさわしい学生を選抜できるような丁寧な方法を行うという姿勢の表明です。
中教審答申が提言する新テストは将来的に「教科型」問題からの脱却を目指していますが、決して学力を軽視しているわけではありません。京大の特色入試でも医学部医学科を除いてセンター試験を課していますし、そのうえで総合問題(能力測定考査)を課す学部もあります。また、「学びの設計書」など多くの書類を提出させるところがほとんどです。高い学力を求める一方で、ペーパーテストで測れる学力だけで選抜することはしないという意思を明確にしていると言えます。

そもそも京大が大学全体として入学希望者に求めるものは基礎的な学力で、
(1)高等学校の教育課程の教科・科目の修得により培われる分析力と俯瞰(ふかん)力
(2)高等学校の教育課程の教科・科目で修得した内容を活用する力
(3)外国語運用能力を含むコミュニケーションに関する力
だといいます。ここで、高校での修得を強調していることに注意する必要があります。もちろん「基礎的な学力」が研究型大学として高いレベルであることは言うまでもありませんが、そのうえで高校での幅広い学習によって多様な力を付けてきてほしいというメッセージが込められています。決して<受験対策> を求めているのではありません。

特色入試を「高大接続型京大方式」と呼んでいることも重要です。入学者選抜の改善によって高校と大学の教育を接続させることで、大学では「幅広い豊かな教養力・俯瞰力、外国語運用力、優れた専門力」を三位一体で育成し、国際展開を担えるグローバル人材の養成を目指すとしています。大学が高い人材養成を行うにも、送り出す側である高校教育をより豊かなものにしてもらう必要があるとの認識です。中教審答申が「大学入試改革」と言わずに「高大接続」改革(高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革)と言っている狙いも、同じことなのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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