2009年度入試で何が問われたか<算数>

難関国・私立中学受験の指導に定評のある先生による、2009年度入試問題の分析をお届けします。
出題形式、分野、頻出キーワードなど、さまざまな角度から分析し、何が問われたのかを解説しています。国語、算数、理科、社会の入試のポイントをご紹介していきますので、ぜひお役立てください。


首都圏10校の徹底分析<算数>

首都圏10校の入試問題を、1問1問、難易度、要求される能力、目新しさの3つの軸から分析。その中から、合否を分けた問題、合否に影響のなかった問題、低学年でもじっくり挑戦させたい問題はどの問題だったのかについて、宮本算数教室の宮本哲也先生によるお話です。
(以下は、2009年4月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの先生の講演を抄録したものです。)

今年度は全般的に「点の移動」の問題が目立ちました。学校ごとに見ていきます。

麻布中学校

大問6題、小問12題の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は上がっています。合格に必要な得点率は70%。ミスをしないように注意が必要です。
大問1は演算記号の問題で、計算問題の代わりにあたる問題です。丁寧にやって全問正解しましょう。大問2は単純な速さの問題ですが、きちんと整理をしないとミスをします。大問1、大問2では、全問正解しないと合格は厳しいと思われます。大問3は、場合の数と数の性質を組み合わせた斬新なおもしろい問題です。すべてを完ぺきに書き出すのはけっこう大変です。大問4(点の移動)は、条件整理を丁寧にやらないと混乱するかもしれません。大問5(平面図形)は、正六角形の分割の問題。大問6は実に麻布中らしい問題です。
合否を分けた1題は大問2です。絶対にミスをしないようにここでは確実に得点しなければいけません。


<2009年度入試 合否を分けた問題 麻布中学校 大問2>

次の問いに答えなさい。

(1)A君は、はじめの3kmは時速4kmで、それ以降は時速3kmで歩き続けます。2時間後には何km進みますか。
(2)A君が出発してから2時間後に、B君が同じ地点からA君を追いかけます。B君は自転車で、はじめの4kmは時速15kmで、それ以降は時速12kmで進みます。B君が出発してから何分後に追いつきますか。分数で答えなさい。

栄光学園中学校

大問4題、小問10題の構成で、試験時間は60分。昨年度の50分から10分長くなりました。昨年度の難易度が非常に高かったため、今年度の難易度は昨年度よりかなり下がりました。合格に必要な得点率は65%。
大問1(計算、規則性、平面図形)は、例年の出題パターンに戻りました。(3)は見た瞬間、ぎょっとするような図形ですが、側面の展開図をかいてみるとあっさりと解けます。大問2(点の移動)は、いきなり面倒な分数が出て面食らうかもしれませんが、整理してみればけっこうすっきりした形になります。もしも大問2でつまずいたら、あまり時間をかけずに大問3(立体図形)に進みましょう。大問3は、最近の栄光学園中の図形問題の中ではかなりやさしいです。
合否を分けた1題は、大問4(条件整理)です。斬新な題材ですが、極端なケースを想定することができれば簡単に解けます。(1)(2)は低学年でも取り組んでみたい問題です。
栄光学園中は、今年度の易化の反動で来年度難しくなると思います。

<2009年度入試 合否を分けた問題 栄光学園中学校 大問4>

A君、B君、C君の通う中学校には各学年180人ずつの生徒がいます。A君は中学3年生、B君は中学2年生、C君は中学1年生です。先日、学年ごとに英語、数学、国語の試験が行われました。どの試験も50点満点で、点数はすべて整数でした。
このとき、次の各問いに答えなさい。

(1)中学3年生の中で、A君は3教科とも180人中5位でした。A君の3教科合計の順位は、最も高くて何位、最も低くて何位と考えられますか。
(2)中学2年生の中で、B君は3教科とも学年の平均点未満でした。B君の3教科合計の順位は、最も高くて何位と考えられますか。また、それはどのような場合ですか。例を1つあげなさい。
(3)中学1年生の中で、C君は3教科とも学年の平均点以上でした。C君の3教科合計の順位は、最も低くて何位と考えられますか。

ただし、(1)~(3)とも、同点の順位については、例えば150点が3人、149点が2人の場合、150点の3人を1位、149点の2人を4位と考えます。

桜蔭中学校

大問5題、小問15題の構成で、試験時間は50分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は80%。
大問1(計算、計算の工夫、規則性)は、面倒ではあるけれど難しい問題ではないので、全問正解しなければなりません。大問2(平面図形)は誰もがやったはずの問題なので、正解できなければいけません。大問3(立体図形)はおもしろい問題です。低学年にもおすすめです。見取り図のすべての頂点に記号をつけ、展開図にその記号を入れれば解きやすいでしょう。大問4(規則性)は(3)だけひとひねりされていますが、難しくはありません。
合否を分けた1題は大問5(点の移動)です。(2)の解答欄の表が大きな手がかりになります。この表から4周目、5周目、6周目と作っていってみましょう。

<2009年度入試 合否を分けた問題 桜蔭中学校 大問5>

図右の図のように、たて20cm、横10cmの長方形ABCDがあります。
この長方形の辺上を、点Pは点Aを出発してA→B→C→D→A→……の順に、点Qは点Pと同時に点Bを出発して、B→C→D→A→B→……の順に動きます。
最初の1周は、点Pは毎秒1cm、点Qは毎秒2cmの速さで動きます。その後、点Pは2周目は毎秒2cm、3周目は毎秒3cm、……、点Qは2周目は毎秒3cm、3周目は毎秒4cm、……のように、どちらの点も1周ごとに秒速を1cmずつ増しながら動きます。

(1)点Qが点Pに初めて重なるのは、出発してから何秒後ですか。
(2)1周目から3周目までについて、2点P、Qがそれぞれ長方形ABCDを1周するのにかかる時間を下の表に書き入れなさい。ただし、単位は秒としなさい。
表
(3)出発してから100秒後に2点P、Qはどこにいますか。下の(例)のように図1に点P、図2に点Qの位置を書き入れなさい。考え方も書きなさい。

図
(4)出発してから100秒間の間で、点Qが点Pと最後に重なるのは出発してから何秒後ですか。

開成中学校

大問4題、小問12題の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっており、合格に必要な得点率は80%です。
大問1(平面図形)は、相似を利用して解く問題です。大問2(割合)は、今年度の開成の問題で唯一手こずりそうな、要注意の問題です。大問3は数の性質(数の範囲)の問題。特に問題はないでしょう。大問4(条件整理)は「継子立(ままこだ)て」という算数では古典的な問題ですが、丁寧な説明がなされていますので難しくはありません。(1)からの誘導に従って考えていけば解ける問題です。
合否を分けた1題は大問2です。他の問題のレベルから見ると、ここで得点できるかどうかが合否に影響を及ぼしたのではないでしょうか。

<2009年度入試 合否を分けた問題 開成中学校 大問2>

日本にあるJ商店では、アメリカにあるA牧場から毎月肉を一定量輸入して日本国内で売っています。J商店はA牧場に、肉の値段(肉の対価)と輸送費の合計(以下、この合計のことを「仕入れ費」ということにします。)を毎月支払(はら)っています。この支払いはすべてアメリカの通貨単位であるドルで行うので、日本円を用意しているJ商店の利益はドルの円に対する価値に左右されます。また、肉の値段は毎月ドルでは一定ですが、輸送費は原油価格の変動によりドルでも変動することがあります。
先月は1ドルは100円でした。先月は、仕入れ費の5割の利益を見込(こ)んで定価をつけて肉を完売しました。
今月は1ドルが90円になったので、原油高のため(ドルでの)輸送費が先月の2倍になったにもかかわらず、(円での)仕入れ費は先月の93.6%ですみました。このため、円高還(かん)元セールとして先月の定価の3%引きの値段を肉につけましたが、完売したところ、利益は先月より95万円多くなりました。
このとき、次の問いに答えなさい。

 (1) 先月の仕入れにおいて、肉の値段は輸送費の何倍でしたか。
 (2) 毎月支払っている肉の値段は何ドルですか。

駒場東邦中学校

大問4題、小問13題の構成で、試験時間は60分。昨年度と比較すると、出題の難易度は下がっています。合格に必要な得点率は75%。
大問1(計算、平面図形、割合)は、すべて基本問題です。必ず全問正解しましょう。
合否を分けた1題は大問2(場合の数)です。やさしい問題ではありませんが、誘導的に作られていますので、(1)から順に考えていくと解きやすいです。大問3(条件整理)は、駒場東邦中のこのタイプの問題としてはやさしめです。大問4(平面図形)は、折り返しの問題としては斬新です。丁寧に整理しましょう。低学年では、紙を実際に折って取り組んでみるといいでしょう。

<2009年度入試 合否を分けた問題 駒場東邦中学校 大問2>

下の図のような、正三角形4つで囲まれた立体があります。点Pははじめ頂点Aにあり、1秒ごとに他の3つの頂点のうちの1つに移動します。
例えば、2秒後に点Pが頂点Aにあるような動き方はA→B→A、A→C→A、A→D→Aの3通りあります。

図

(1)3秒後に点Pが頂点Aにあるような動き方を、上の例にならってすべて答えなさい。また、3秒後に点Pが頂点B、C、Dにあるような動き方は、それぞれ何通りありますか。
(2)4秒後に点Pが頂点Aにあるような動き方は何通りありますか。
(3)5秒後に点Pが頂点Aにあるような動き方は何通りありますか。

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