所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 日本と違う? 子どものほめ方・叱り方(2)

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。

イギリスに滞在していた際、現地校にお子さまを通わせている友人から「Thinking chair」という言葉を教えてもらいました。直訳すると「考える椅子」? 何のことかと思いますが、これは子どもがひどいいたずらをした時などに反省させるために座らせる椅子なんだそうです。あとで調べたら「Naughty(いたずら) chair」ともいうそうで、イギリスでは多くの学校で取り入れているようです。アメリカに住む友人にも同じようなしくみがあるか聞いてみたところ、「Time out」という方法があるそうで、これは簡単に言えば家の中に閉じ込めることだそうです。イギリス・アメリカに共通して言えるのは、家の中に閉じ込めたり、指定した場所にじっと座らせたりすることで、子どもの行動の自由を取り上げて反省させることのようです。

日本でも押入れに閉じ込めるといったお仕置きがありますが、逆に「そんなことする子どもは、もううちの子じゃありません!」と言って、イギリス・アメリカとは逆に家の外に閉め出したりもしますね。幸い、私はこうした叱り方をせずにここまで子育てしてこられたので、これらの方法が効果的なのかどうかはわかりませんが、いたずらをした子どもに自分がしたことを冷静に振り返らせるにはどういう叱り方がよいのか、子どもの様子、タイプ、いたずらの程度などから見極めて工夫する必要があるのかもしれません。

そこでふと思い出したのが、だいぶ前のものですが、日米の食事場面でのしつけの比較研究についてまとめられた本です(※)。この研究によると、日本人は「食べないと大きくなれないよ」「食べないと病気になって遊べないよ」と、叱る理由を子どもにもわかるように話す親が多く、アメリカ人は「食べなさい!」「食べないとダメ!」と直接的に叱る親が多いそうです(もちろん、個々人の違いはありますが)。

日本の親は、子どもは状況が理解できていないだけで、わかればいけないことはしなくなる、という考え方をする人が多いからではないか、とのこと。以前に発達心理学の専門家のかたから、子どもの年齢が小さくて親の言葉が十分に理解できなくても、繰り返し子どもに理由を含めて話すことで、それが子どもの中に取り込まれて、子どもの規範意識が育つ、と伺ったことを思い出しました。

一方で、アメリカの親は、親に権威があることをはっきりさせなければいけないと考え、子どもに譲ったり弱みを見せたりするとこの関係が崩壊して、子育てがうまくいかなくなると考える人が多いとのことです。

どちらが良い・悪いではなく、子どもの年齢や状況、タイプに応じて、子どもがわかるように伝えるつもりで叱ることが、一番大切ですよね。私自身は、やはり説得型の叱り方が自分にはしっくりくるのですが、それでも子どもが言うことをきかない場合や、命の危険にかかわるようなことをした場合は、その場で、短い言葉で、物事の善しあしをはっきり教えるアメリカ型のストレートな叱り方も取り入れてもよいのではないかと思います。

とはいえ、実際には親自身が動揺してしまったり、うまく説明する言葉を持っていなかったりすると、「叱る」のではなく「怒る」ようになってしまうことも……。ほめることもそうですが、叱ることも、それを伝える言葉をたくさん持ち、親自身が落ち着いて対処するような工夫や努力、訓練が必要な気がします。場数を踏みながら、親も親として育っていくことが必要なんですね。

<引用・参照>
※「日本人のしつけと教育-発達の日米比較にもとづいて-」(東洋、東京大学出版会、1994)


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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