所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 「整理整頓・片付け」のしつけのコツ(2)~海外の事例から

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。

前回では、子育ての悩みの種、「片付け」について調査データなどから考えてみました。今回は、片付けのしつけのコツについて、あくまで私の個人的な経験からではありますが、アメリカとイギリスの事例をご紹介したいと思います。

まずはかなり昔の話になりますが、私がアメリカでホームステイしたお宅の話です。そのお宅には小学4年生の男の子がいましたが、いつもきれいに片付いていました。そのお宅のお母さんにコツを尋ねると、お子さまと約束しているいくつかのルールがあることを教えてくれました。

中でも最も印象的だったのは、片付ける場所を細かく分けて決める、ということ。たとえば、学校のプリントなら、「プリントはこの箱」ではなく「算数のプリントで使い終わったものはここ」くらいの細かさで分類して片付けるようにしていました。それぞれの箱や棚には、何を入れるところかラベルが貼ってあり、それがまたカラフルで遊び心のあるラベルでした。学校に連れて行ってもらい教室の中も見学したのですが、プリントの分類などは家庭と同じように行われていました。子どもが迷わず分類して片付けられる場所が用意されていて、そこに遊び心があって片付けるのが楽しくなることなど、家庭・学校共通の工夫やコツがあるように感じました。

また、子ども部屋の中には小さなテントのようなものがあり、おもちゃのような大きめの物はそこに押し込んで入口を閉めてしまうのでスッキリ片付きます。カラフルなテントは部屋の中のアクセントにもなっておしゃれでした。ただ、これを日本でまねるには、ちょっとスペースが必要ですが……。

次に、夫の仕事の関係で1年間ロンドンに住んでいた時のこと。知り合いになったイギリス人のお宅にお茶に呼んでいただきました。まだ幼稚園に通う小さなお子さまも含め3人の男の子がいるのに、お部屋はよく片付いています。

そのお宅では3人の男の子たちにゲームのように競わせて片付けをさせるそうです。食事の前など、遊びが終わる時間になると音楽(片付けの時の定番)を流し、「よーい、どん!」で3人のうち誰が一番早く、きれいに片付けられるか競い合うそうです。彼女のオリジナルなのか、イギリスではよく行われていることなのかわかりませんが、ゲームにしてしまうのはよい工夫だと思います。ただ、「ゲーム」が盛り上がりすぎて収拾がつかなくなることも、たまにはあるそうですが……。

また、男の子3人なので、なるべくお下がりを使い、それでもいらなくなったものはチャリティーショップに寄付するそうです。日本でもリサイクルショップはかなり増えましたが、ロンドンにはチャリティーショップが本当にたくさんあり、私の住んでいた家の近所の小さな商店街にも3軒ありました。ロンドンでは、よくここを利用して寄付したり、逆に欲しいものは安く買ってきたりするかたが多いようです。こうして、家の中のモノをなるべく少ない状態にしておくこと、しかし古くても、よいものは大切に使い続けることがイギリス流のシンプルな生活なのよ、と教えてくれました。子どもたちにも、そういう大人の姿を見せることで、価値観を伝えていくのだと感じました。

まとめると、「遊び心があること」と「片付けを子どもがわかる、できるレベルまで具体的にしてあげること(片付ける場所や時間を決めるなど)」の2点がコツのようですね。

とはいえ、アメリカやイギリスでもこれはお手本のようなお宅の話かもしれません。ロンドンのテレビ番組では足の踏み場もないような家の様子もよく取り上げられていましたし、インターネットで「messy」(ちらかっている)「tidy up」「clean up」(片付ける)と入れて検索すると、本当にたくさんの情報が引っかかってきます。片付けのしつけは「行うは難し」なのですね。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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