所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 日本だけ? 子育ての悩みの種「整理整頓・片付け」(1)
楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。
子育てにはさまざまな悩みや気がかりがつきものですが、小中学生の母親を対象にベネッセ教育総合研究所が行った「第4回子育て生活基本調査報告書(小中版)」(外部のPDFにリンク)の第1章でも、子育ての気がかりとしてすべての学年で上位3位以内、5~6割の母親が「気がかり」と回答しているのが「整理整頓・片づけ」です。これは、たくさんの項目から「悩みや気がかり」になっている項目をすべて選んでもらった結果で、さらにその中から「もっとも気にかかっていること」を選んでもらうと順位はかなり下がります。つまり、「とても悩んでいるわけではないが、子どもがいくつになっても気になる」のが子どもの整理整頓・片付けのしつけなのかもしれません。
ところで、10年ほど前になりますが、整理整頓・片付けについて独立行政法人国立女性教育会館が日本・韓国・タイ・アメリカ・フランス・スウェーデンの6か国の保護者を対象に行った「家庭生活に関する国際比例調査」(外部のPDFにリンク)があります。この調査では、子どもが5歳の時に一人で「遊んだ後の片付けができる」と答えた保護者の割合は、タイ・アメリカでは8割以上、日本やその他の国も7割弱という結果でした。さらに、子どもが15歳の時に一人で「身の回りの整理整頓をする」ことができると答えた保護者は、最も高いタイではほぼ100%、日本などほかの国も9割前後という結果でした。つまり、幼児・小学生段階では7割くらい、そして中学校卒業くらいの段階では約9割の子どもが1人で片付けられるようになる、ということになります。しかし、その割に、最初に紹介したベネッセの調査では、小中学生の母親の実に5~6割が子どもの「整理整頓・片づけ」が気がかりだと答えています。なぜでしょう?
いろいろな解釈ができると思いますが、私自身の子育て経験と重ねて考えてみると「まったくやらないわけではないけれど、いつもやるわけでもない」「本人はやっているつもりかもしれないけれど、親が期待するほどやれていない」……つまり、「できるけれどやらない、やっても十分ではない」という状態で、それが保護者にとってはかえって気になるように思います。もちろん、まったく片付けないお子さまもいるかもしれませんが……。
タイを除けば、どの国も日本と大差ない結果でしたので保護者親のストレスも同じ……と思いましたが、もしかしたらそれは違うかもしれません。1981(昭和56)年に当時の総理府が行った調査(※1)で、日本とアメリカの母親に「いい子」の特性について尋ねたところ、日本の母親の約6割が「基本的生活習慣」を選んだのに対し、アメリカ人の母親は3割強しかこの項目を選びませんでした。「日本では『言われたとおりちゃんと、しかも気持ちよくやる』ことに関連した項目」が重要視されていると分析されています。
「ちゃんと」「自分から」できることを重視すると、片付けなどはかなり気になってしまいますね。その点では、アメリカよりも日本のほうが母親のストレスは大きいのかもしれません。日本の母親のストレスを軽減するには、「だいたい」できている、くらいで手をうつことも時には必要かもしれませんね。
とはいえ、やはり散らかっている部屋を見るのはうんざり……というのも正直なところ。次回は、片付けのしつけのコツや工夫を、海外の事例などからご紹介します。
<参考・引用>
※1『日本人のしつけと教育-発達の日米比較にもとづいて-』(東京大学出版会、 1994)第3章P84-89
『国際比較日本の子供と母親』(総理府青少年対策本部編、1981)