国立大学が「一列」でなくなる! 55校は「地域貢献大」に

文部科学省は、2016(平成28)年度予算の概算要求(外部のPDFにリンク)と国立大学入学予定定員をまとめました。それらの資料から、全国86校の国立大学を大学のミッション(使命・役割)に応じて、3タイプに分類したことが明らかになりました。また、多くの学部の新設・改組などが予定されています。いよいよ2016(平成28)年度から、国立大学の再編が本格的にスタートすることになりそうです。

国立大学が「一列」でなくなる! 55校は「地域貢献大」に


文科省が、教育内容などが「ミニ東大」といわれるように画一的だった国立大学を改革し、それぞれの特色に応じた教育研究を進めるため、3タイプに機能分化させる方針であることは、以前の記事でも取り上げました。2016(平成28)年度概算要求を見ると、国立大学への運営交付金の中に「機能強化の重点支援」(404億円)として、86校ある国立大学を機能分化させるための予算枠を計上しています。

注目されるのは、既に全部の国立大学のタイプ分けが終了していることです。資料によると、次のようになっています。

(1)「卓越した教育研究」タイプ
北海道・東北・筑波・千葉・東京・東京農工・東京工業・一橋・金沢・名古屋・京都・大阪・神戸・岡山・広島・九州(以上・16大学)

(2)「専門分野の優れた教育研究」タイプ
筑波技術・東京医科歯科・東京外国語・東京学芸・東京芸術・東京海洋・お茶の水女子・電気通信・奈良女子・九州工業・鹿屋体育・政策研究大学院・総合研究大学院・北陸先端科学技術大学院・奈良先端科学技術大学院(以上、15大学)

(3)「地域貢献」タイプ
上記(1)(2)以外の55大学

東大など旧帝国大学系をはじめとして、筑波大や東工大など主要16校が「卓越タイプ」、東京芸大など、専門分野で強みを持つ大学や大学院大学の15校が「専門分野タイプ」となったほかは、ほとんどの国立大学が地域の人材育成や振興などに協力する「地域貢献タイプ」となりました。
3タイプの分類は、各国立大学の教育研究の中身まで縛るものではありませんが、今後、この機能分化に沿った大学改革を求められることになりそうです。実際、2016(平成28)年度の新設学部を見ると、「地域デザイン科学部」(宇都宮大)、「国際地域学部」(福井大)、「芸術地域デザイン学部」(佐賀大)、「地域資源創成学部」(宮崎大)など、機能分化に対応した学部の新設が目立ちます。これから「地域」は地方の国立大学再編のキーワードになってくると思われます。

一方、文科省は、国立大学の教育養成系と人文社会科学系の学部などを社会的要請に合わせて再編するよう求めていることも、既にお伝えしました。2016(平成28)年度は、人文学部を「人文社会科学部」(弘前大、高知大)に改組するなど、社会的ニーズに対応する動きが出始めています。教員養成系でも、教員免許取得を目指していない課程を募集停止にしたり、教育学の大学院専攻科を廃止して教職大学院へと衣替えしたりする大学も出ています。

国立大学の機能分化が2016(平成28)年度から始まれば、17(同29)年度以降は各国立大学の学部・学科の再編が加速することは、ほぼ間違いありません。大学志望者やその保護者は今後、志望する国立大学の再編動向に十分に注意を払う必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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