所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て 日本と違う? 子どものほめ方・叱り方(1)

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。このコーナーでは、日本とはちょっと違う、ほかの国の子育て事情をご紹介します。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。

皆さんは、お子さまにどんな人間に育ってほしいと思いますか? 答えは家庭・人によりいろいろだと思いますが、お子さまが、自分なりに自信を持ってのびのびと生きてほしいと願う気持ちは、多くのかたがお持ちではないでしょうか。

子どもが自分自身を好きでいるためには、保護者などが子どものよいところを積極的に認め、ほめることが大切……と、よく言われますが、日々子どもと向き合っていると、子どもの長所よりも、むしろ短所に目がいき、ついつい叱ってしまうことも。子どもをほめること、叱ることは意外に難しいものです。そこで、今回、そして次回は、子どものほめ方と叱り方について取り上げてみます。今回は、特にほめ方について考えてみたいと思います。

夫の仕事の都合で過ごしたロンドンで、日本文化を子どもに教えるボランティアとして訪れた小学校でのこと。小学1年生のクラスでしたが、教室に入ってくると先生から指示されなくても前から順に並んで座りました。すると担任の先生は「まあ、なんて素晴らしい! 昨日練習したことが今日できているなんて、あなたたちは本当に素晴らしい生徒だわ!」と、ちょっと大げさ?なほど、ほめていました。ほめられた子どもたちは……というと、「すごいでしょ!」と言わんばかりに得意満面でした。教室でちゃんと座ることは当たり前のことではあるのですが、当たり前のことができるのが、まだまだ難しい年齢でもあり、こういう日常的なことでほめられることは、大人が思う以上に子どもにとっては自信になるのかもしれない、と考えさせられました。

大人の私ですらロンドンでは、ほめられる機会が多かったように思います。語学学校に通っていた時は「積極的でとてもいいよ。素晴らしい!」というような感じで、とにかく多彩な言葉でほめちぎってくれます。そのうえで、「●●を練習するともっとよくなるよ」と具体的なアドバイスとして、欠点を指摘してくれます。このように、ロンドンの生活の中では、ほめ言葉の多彩さ、ほめられる機会の多さに感心させられました。

また、これは10年以上前ではありますが、仕事でアメリカの小学校に行った時のこと。低学年の教室でしたが、1人の子どもが台の上に立ち、ほかの子どもたちがそれを取り囲んで座っています。台の上に立っている子どもの横に、順に数人の子どもが出てきて、立っているその子どものことを紹介します。先生に聞いたところ、これは「Star of Today(今日のスター)」という活動とのこと。台の上に立っているのはその日が誕生日の生徒で、その生徒の素晴らしいところをクラスメートが紹介する活動だそうです。この活動を通じて友達のよい面を見つける目を養う、それを言葉で表現して伝える力を身に付ける、ということが目的だそうです。

人をほめることは意外に難しく、タイミングが遅かったり内容が抽象的だったりすると、本心からほめているのか疑わしく感じられるなど逆効果になってしまうこともあります。相手のよいところに敏感に気付くことが大切だと思いますが、それを子どものころから意識的に訓練していることに驚きました。

一方で、子どもをほめることは、時として甘やかしではないかと言われることもあります。やってはいけないことをした時は当然、叱ることも必要だと思います。しかし、できて当たり前のことも含めて、子どものさまざまな場面をとらえてほめる、認める言葉をかけると、それが子どもの心の中に生きていくうえでのエネルギーとして蓄積され、自信や、苦しい時の心の支えになっていくのではないかと感じます。イギリスやアメリカのことも、そのまままねるのではなく、必要なところだけ、自分なりに取り入れていけたらよいのではないかと思っています。

プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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