子どもの自殺 国が導入した初の「自殺予防教育」を専門家が解説
相次ぐ子どもの自殺を見かね、文部科学省が対策に乗り出した。子どもの自殺が起きた時の調査指針を改定するとともに、子どもたちに向けた自殺防止教育導入の手引書を作成した。同省が子どもたちを直接の対象とした自殺予防教育に踏み切るのは初めてだという。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が解説する。
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子どもの自殺について、文科省が設置した「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」は、「自殺の背景調査の指針」を改定しました。これまでは子どもの自殺が発生しても遺族の意向などを理由に学校側が教育委員会などに報告しない例もありました。これに対して新指針は、「自殺又は自殺が疑われる死亡事案」の全部について「基本調査」(指導記録の確認、教職員からの聞き取り調査など)を実施し、報告書を教育委員会と文科省に提出するとしています。さらに、「学校生活に関係する要素(いじめ、体罰、学業、友人等)が背景に疑われる場合」と「遺族の要望がある場合」などのケースでは、外部の専門家などを交えた「詳細調査」を教育委員会が実施することになります。
注目されるのは、調査結果を踏まえて、残された子どもたちを直接の対象にした「自殺予防教育の導入」を打ち出している点です。友人や知り合いが自殺した子どもたちは混乱しており、そっとしておくべきだという意見もありますが、同協力者会議は「子供は既に様々なところで多くの情報を手に入れてしまっており、その情報の多くは誤っている」として、再発防止のための自殺予防教育の重要性を強調しています。
ただし、自殺予防教育の実施に当たっては、教員や保護者など「関係者間の合意形成」、自殺予防プログラムなど「適切な教育内容」、自殺のハイリスクを抱える生徒への「適切なフォローアップ」が前提条件となるとクギを刺しています。
作成された手引書には、子どもの自殺に関するQ&Aも収録されており、保護者などにも役立ちそうです。自殺により友人を失った子どもたちは、救えなかったという罪悪感や喪失感を抱くことがあります。「心のケア」だけでなく、さらに踏み込んだ対策が必要なのかもしれません。
出典:学校に自殺予防教育を導入へ 自殺理由の多くは学校でのトラブル -ベネッセ教育情報サイト