「国際バカロレア」が日本の教育を変える!?‐渡辺敦司‐
世界中で通用する大学入学資格などを与える「国際バカロレア」(IB)について、政府(外部のPDFにリンク)は日本国内の認定校等を200校に増やすことを目指しています。ただし2014(平成26)年6月現在のIBスクールは27校にとどまっており、そのうち20校はインターナショナルスクールです。当面は自分たちに関係ないな……と思っているお子さんや保護者のかたが多いのではないでしょうか。しかし、そうではなさそうです。IB校の拡大が、徐々に日本の学校教育を大きく変えようとしているのです。
政府方針を受けて、私学はもとより東京都立国際高校や札幌市立札幌開成中等教育学校(2015<平成27>年度開校、現在は市立北海道札幌開成高校)など公立でも名乗りを上げる学校が出始めています。2013(平成25)年度から日本語でも授業ができる措置が導入されたことも、そうした動きを後押ししています。しかし引き続き英語で実施しなければならない科目があること、特別なカリキュラムや指導を実施するためには教員が国際的な研修を受けなければいけないことなど、普通の高校には依然としてハードルが高いことも事実です。
しかし変化は高校の「外」から起こりつつあります。国内の大学で、IBを活用した入試を行おうという動きです。文部科学省などのまとめによると、2014(平成26)年8月現在で国立4大学(筑波・東京外国語・大阪・岡山)、公立2大学(国際教養・横浜市立)、私立8大学(関西学院・慶応義塾・国際基督教・順天堂・上智・玉川・立教・早稲田)が既に導入しており、今後も東京大学や京都大学、法政大学(いずれも2016<平成28>年度から)など続々と導入方針を決めています。いずれも定員を限った特別入試の扱いですが、国内にも受け皿が整うことで、IBの導入を検討しようという高校の大きな動機付けになることは間違いありません。受験生にとってもIB資格の取得は海外大学への進学に道を開くだけでなく、国内大学への進学にも有利になるのです。
国内のIBスクール校長を歴任し、IB日本アドバイザリー委員会(外部のPDFにリンク)委員や広島女学院大学(外部のPDFにリンク)客員教授(IB調査研究室長)も務めるリンデンホールスクール中高学部(中等教育学校、福岡県筑紫野市)の大迫弘和校長は、東京都内で行われたシンポジウムで「世界中の名だたる大学がIB卒業生を欲しがっている。大学教育を受けるために必要なスキルと姿勢のトレーニングを徹底的に受けているからだ」と指摘。同シンポに招かれた中央教育審議会委員の北城恪太郎・経済同友会終身幹事(日本アイ・ビー・エム相談役)も、経済界の立場から「IBは必ずしも海外で活躍するためだけでなく、これからグローバル化する(日本)社会で求められる能力を育てるものだ」と評価しました。IB資格を持っていれば、大学からも企業からもグローバル人材の卵として引っ張りだこになるのです。
政府の「200校計画」には、IB認定校に「準じる高校」が加わっていることにも注目されます。スーパーグローバルハイスクール(SGH)でも国際的な課題研究を中心とするなど、IBの手法を大いに取り入れようとしています。決して一部の特別な学校の話とは言えなくなりそうです。