家族の一員として、子どもと一緒にペットを飼う【第4回】人懐っこさが魅力の犬(2)犬の飼い方Q&A

前回は犬の性質や、ペットが子どもに教えてくれることについてお伺いしました。今回はQ&A形式で気になる質問に回答します。


Q. 愛犬が、大人のいうことは聞くのですが、子どものいうことを聞きません……



▲タイトハグ

A.マズルコントロールを実践してみて
犬というのは、家族を一つの群れととらえ、その中で順位付けをする性質があります。一緒に生活するうえでは、人間が上ということを教えておかなければ問題が出てくることもあると思います。家の中での順位付けがうまくいっていない場合は、「マズルコントロール」という方法を試してみてください。
まず、タイトハグ(ギューッと犬を抱きしめること。※画像参照)します。次に、首を痛めない程度の遊びの強さでマズル(動物の鼻口部のこと)を押さえつけます。すると、いやがった犬が頭を振って払いのけようとするところを少しだけ強い力で、それを止めて自分のほうが強いということを教えます。
家族一人ひとりができることが理想ですが、小さいお子さまなどの場合は保護者が手助けしながら実践してみてください。ただし、犬が嫌がるそぶりを見せた場合には、思わぬ怪我の恐れがありますので無理に続けないことです。
また、特に10歳未満の小さいお子さまの場合は、犬より力がない場合もあるので、「抵抗すれば、自分の要求が通る」と誤解させてしまう場合があります。お子さまと犬の信頼関係を構築するには、まず犬にお子さまからフードを与えることから始めましょう。おもちゃで遊ぶ時も、お子さまから与えます。この場合は、引っ張りっこや、取り上げる行為は大人がやるようにして、子どもは犬にとって「よい人」であることを学習させます。

Q. 無駄吠えが多く困っています

A. 吠えるのには必ず理由があるはず

よく「無駄吠え」と言われますが、これは実は無駄ではなく、何かを伝えようとしているのです。犬は飼い主さんを守っている気でいるのかもしれません。
宅配業者を不審に思い、飼い主さんを守ろうとした……など、必ず何か原因があるはずなので、それに対して改善できることを考えてあげることが重要です。

Q. トイレのしつけがなかなかうまくいきません

A.人間の理屈を押し付けて叱るのはNG!

しつけで一番問題になるのは、トイレに関わる問題です。トイレ以外の場所で用を足したら、「こんなところでダメじゃない!」とつい声を荒げてしまうこともあるかと思います。しかし、そこで重要なのは、人間社会のルールを犬に押し付けないということです。犬にしてみれば、すべての場所がトイレ。「床が汚れるからそこでしないでほしい」というのはあくまで人間側のルールです。
また、トイレを失敗した愛犬に、「あーあ!」や「もう!」などと大きな声で反応すると、犬は飼い主さんが喜んでくれていると勘違いしてしまいます。そういった時は淡々と片付けをしてください。一番よいのは、犬の生活空間全部にペットシーツを敷き詰めて、どこでもよいから用を足したら「よくできたね!」とほめてあげる方法です。だんだんと排泄(はいせつ)する場所としない場所の傾向が出てくるので、徐々に枚数を減らしていってください。これが、典型的なトイレのしつけ方法です。

Q. 噛み癖があって困っています

A.犬は噛むことによって物体を認識しています

噛み癖でよく問題になるのは1歳未満の犬です。犬は手が使えないため、自分で噛んでみた感触で、物を認識する性質があります。特に1歳未満の犬は好奇心が旺盛なためこのような行動に出ることが多いです。
「口がかゆいから」という説もありますが、そういうわけではなく、年をとったら自然とやらなくなります。なので、噛んでもOKなものであれば、噛ませてあげてください。逆に、噛まれたら困るものは仕舞っておきましょう(笑)。犬も人間の赤ちゃんと同様、興味があるものには触れて確かめたいもの。それを手ではなく、口でやっているだけなのです。自分たち人間の生活を中心に考えず、まだ幼い愛犬の成長をゆるやかに見守ってあげてくださいね。


私たちの生活を豊かに、そしていろいろなことを教えてくれるペット。飼いたいと思った時には、ペットショップを訪れるのもよいですが、NPOなどが行っている譲渡会などもあります。譲渡会にはさまざまな事情から保護された、いろいろな犬が新しい飼い主さんとの出会いを待っています。
犬との生活を望んでいるかたは、そんな選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。


プロフィール


川野浩志

プリモ動物病院 練馬 動物アレルギー医療センター院長。北里大学獣医畜産学部獣医学科卒。山口大学大学院連合獣医学研究科在籍。著書に『はぐれ獣医純情派』(文芸社)、『家庭犬の医学』(オクムラ書店)がある。

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