「~しなさい」と言うよりも子どもが自ら動く言葉[やる気を引き出すコーチング]

先日も、高校に招かれ、3年生に講演をさせていただきました。私が一方的に話すばかりでなく、時々、「皆さんはどう思いますか? では、隣の人と相談タイム! どうぞ!」と促し、数分間、生徒同士で話をしてもらいながら進めます。
そろそろこちらの話を聴いてほしいなと思う時、また声をかけるのですが、「では、話すのをやめてください」とか「静かにしなさい」とは決して言わないことにしています。「~しなさい」という命令形で、相手を動かすことに、コーチ業の私は非常に抵抗を覚えるのです。では、何と言うのか? 私はいつもこうしています。

感謝とこちらの気持ちを伝える

「はい! ありがとうございました。お疲れ様でした」と声をかけます。すぐには静かにならないこともあります。少し間を置いて、また、「はい! ありがとうございました」と声をかけて待ちます。しだいに、落ち着いてきます。

そこで、すかさず、「隣同士でたくさん話してもらえて嬉しかったです」と伝えます。これで、だいたい静かになりますので、講演を続けます。その後も、折々に、隣の人と話す機会を作りますが、講演に戻す時は、「はい! ありがとうございました」と声をかけます。聴く体勢に戻ってくれると、自分の気持ちを伝えます。

「私が『静かにしてください』なんて一言も言わなくても、皆さんは聴く体勢に戻って集中してくれるので、とても嬉しいです。皆さんの集中力に感動しています」。

感謝と自分の気持ちを伝えることで、こちらの意図をくんで行動してもらえます。このように「私」を主語にして伝える言葉をI(アイ)メッセージと言います。Iメッセージは、指示命令よりも、よほど相手が自ら動いてくれると感じます。

「~しなさい」と言うことで、相手の自発性は確実に奪われます。そればかりか、「わかっているのに」、「いちいちうるさい」という反発心さえ湧いてきます。「言われるから仕方なくやる」という気持ちからは楽しさや集中力は生まれません。

また、私も自分の気持ちを肯定的に伝えていると、向かい合っている子どもたちは、「言って聞かせないと動かない存在」ではなく、「気持ちを伝えたらわかってくれる存在」と思えてくるのです。Iメッセージは、言われた側への効果もありますが、伝えているこちら側の気持ちにもプラスの影響があるように思います。

ネガティヴな気持ちもIメッセージで

これは、スマホに没頭している高校2年生の娘さんに、いつもイライラしているSさんのお話です。「もういい加減にしなさい」、「時間を決めて使いなさい」といくら言っても、なかなか改めようとしません。

Iメッセージについて学んだSさんは、娘さんとの対話の中で、次のように伝えてみました。

「あなたがずっとスマホを見ていると、目が悪くなるんじゃないかと思って心配なの。スマホに夢中になっていて、お母さんが声をかけても返事をしてもらえないとすごく悲しい」。感情的に怒鳴るのではなく、目を見て穏やかに伝えました。

「心配」、「悲しい」などのネガティヴな表現であっても、率直な気持ちを伝えられると、言われたほうは考えます。「~しなさい」と言われるよりも、自分の言動が相手に与えた影響についてふりかえります。「勝手によけいな心配しないでよ!」と思う子どももいるかもしれません。ところが、「お母さんをそんな気持ちにさせたんだ」と知ったこの娘さんは何か思うところがあったのでしょう。

「じゃあ、ルールを決めるよ」と自分から言ってきたそうです。「食事の時はそばに置かない」、「22時以降は見ない」などのルールを明確にしました。ルールを守れていたら、もちろん、Iメッセージで伝えます。「決めたことを守ってくれてありがとう。あなたのそういうところがお母さんは大好きだよ」。

「~しなさい」と言っていた時より、ずっと効果的だそうです。Iメッセージはぜひお薦めします。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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