総合学習で学力アップ、そのワケは……?‐渡辺敦司‐

文部科学省が発表した2014(平成26)年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト) (外部のPDFにリンク)の結果、「総合的な学習の時間」(総合学習)にきちんと取り組んだ学校ほど学力が高くなっていることが明らかになりました。総合学習といえば、「『脱ゆとり』で時間数も減らされたし、いずれは無くなってしまうんだろう」と勘違いしたままのかたもいるかもしれません。実は今後、ますます重要な学習になりそうなのです。

調査では、国語と数学・算数のテストとともに、児童生徒や学校にアンケート(質問紙調査)を実施しています。学校に対して「前年度までに、総合的な学習の時間において、課題の設定からまとめ・表現に至る探究の過程を意識した指導をしましたか」と尋ねたところ、「よく行った」と回答した学校のほうが、「あまり行っていない」「全く行っていない」と回答した学校より、平均正答率が小学校は国語Aで2.5ポイント、同Bで3.4ポイント、算数Aで2.2ポイント、同Bで3.0ポイント、中学校でも国語Aで3.0ポイント、同Bで4.4ポイント、数学Aで4.4ポイント、同Bで5.1ポイント、それぞれ上回っています。

2008(平成20)年に告示された現行の学習指導要領は、それまで小学校高学年で年間110時間(週3.1コマ)、中学2年生で70~105時間(週2~3コマ)などとされていた総合学習の時間数(外部のPDFにリンク)が70時間に統一されましたから(中学1年生は50時間)、当初は「縮小された」と捉える向きが学校現場にあったことも確かです。しかし現行指導要領は「習得・活用・探究」のバランスを取ることを目指しており、各教科等で「習得」した知識を「活用」する学習活動を展開するとともに、総合学習で課題を「探究」することによって「確かな学力」を育成することを目指しています。総合学習の時間数を減らしたのも、話し合ったり表現したりするなど以前は総合学習の中で行っていた「言語活動」を、国語科はもとより全教科でも実施することにしたためです。学校全体としてはむしろ総合学習で行ってきたような学習活動を「充実」させたというのが文科省の説明です。今回の全国学力テスト結果を見ても、指導要領の目指した方向性は間違っていないことが実証されたようです。

ただ注意しなければならないのは、質問紙調査でも「課題の設定からまとめ・表現に至る探究の過程を意識した指導」とあるように、単に指導要領で定められた時間数をこなせばよいというわけではなく、きちんと児童生徒を指導してこそ学力向上につながるということです。もっと言えば、総合学習で探究の成果を上げるためには、各教科等でのしっかりとした知識の習得と活用が不可欠です。総合学習を導入した前回の指導要領(1998<平成10>年告示)でも、全面実施から1年後の2003(同15)年に一部改訂され、総合学習のねらいなども明確化された経緯がありました。
秋にも諮問が行われる見通しの次期改訂でも「育成すべき資質・能力」(外部のPDFにリンク)による指導要領の組み換えが目指される見通しで、言語活動や探究活動のような学習がますます重視されることになりそうです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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