中江有里さん(女優、脚本家、作家)が語る、「人生を豊かにする読書術」【前編】

年間300冊を読破する芸能界きっての読書家であり、脚本や小説、書評などの執筆も行う中江有里さん。そんな中江さんに、読書の喜びと、本の選び方、読み方について語っていただきました。

唯一得意なのが読書感想文だった

私はもともと小さいころから活字がとても好きで、その延長で本を読むようになりました。子どものころによく読んだのは、主に児童書ですね。読める文字(漢字)に限りがあるので、その時その時の自分に合った本が自然と決まってきました。
当時は、読書感想文の課題があると、張り切って書いていた記憶があります。他に得意なことがなかったので、唯一すがれるものだったんです。読書感想文は、答えがないところが自分に合っていました。解釈がひととおりとは限らなくて、まったく突拍子もないことでなければ、「そんな読み方もあるね」と自分自身の存在を認めてもらえるようで、とても好きでした。読書感想文は自分が第一の読者です。読んで楽しいものにしようと、「どういう書き出しだったら自分がワクワクするかな」とか、「文章をどういう順番に並べたら思っていることが伝わりやすいかな」というようなことを無意識に考えて書いていたようです。



子どものころから、読書は心の安定剤

子どものころから変わらないんですが、私にとって読書は、心が安定する場所、ある種の逃げ場かなと思います。仕事で煮詰まっている時によく読み返すのが、向田邦子さん。あと、村上春樹さんの『風の歌を聴け』なども、「この文章の軽やかさは何なんだろう」と思いながら、何度も読んでいます。どっぷりつかれる本を見つけておくと、気持ちをリフレッシュできるのではないでしょうか。まるでお気に入りの温泉みたいなものだと思います。
私は、持ち歩きにはこれ、寝る前に読むのはこれ、といった感じで、何冊かの本を同時に読み進める併読をよくしています。本の組み合わせは、食べ物の組み合わせに似ていると思います。甘いものばかりが続くと飽きるのと同じように、たとえば穏やかな気持ちになれるエッセイ集を読んだら、ミステリー小説を読んでみたり、重厚なノンフィクションを読んでみたり。違ったジャンルのものを組み合わせると、目先が変わるから飽きないし、読むのが新鮮で楽しいんです。



本との出合いはアンテナが必要。「ビブリオバトル」をご存知ですか

受け身だとなかなか本に出合えないと思っているので、新聞や雑誌などを読む時は、必ず書評欄に目を通しています。現在は1日に200点以上の本が刊行される時代。これだけ膨大な本の中で「とてもよい本だけれど、見過ごされてしまう」ものが多くあります。私はそういう本に出合いたいと思っています。そのため、本を探しに書店に行くことも多いんです。いろいろ眺めて、タイトルや取り上げている題材、装丁、そういうのを全部含めて気になるものを買い求めます。

NHK BS2の「週刊ブックレビュー」で司会をしていた時は、ゲストのかたに本を紹介していただきました。なかには「自分だったら手にとらない」ような本もありました。でも、どれも読んでみると興味深い。読んでわからない時は、自分の知識や経験、感性が足りないからだと、気恥ずかしく思っていました。でも、自分と合わない本に出会っても、損をしたとは思いません。わからなくても1回その世界に浸ってみて、1行でも自分と共感するものがあれば、それでいいんです。その1行に引っかかったことによって、またどこかで自分の知らない世界に巡り合うんじゃないかと思っていますね。

本との出合いの機会としておもしろいなと思っているのが、「ビブリオバトル」。何人かが本を持ち寄って一人5分でその本の魅力を紹介し、どれがいちばん読みたくなったかを観客の投票で決める書評ゲームです。私は高校生のビブリオバトルにゲストとして参加したことがあるんですが、高校生たちの説明がどれも個性的で、取り上げられた本をすべて読みたくなりました。読書感想文を書くのは苦手でも、こちらならチャレンジしやすいのではないでしょうか。

後編は、読書が持つ豊かな可能性と、子どもを読書に導く環境の整え方について語っていただきます。お楽しみに。

『学びやぶっく 72 いくつ分かる? 名作のイントロ』
<明治書院/中江有里(著)/1,296円=税込>

プロフィール



1973年大阪府生まれ。芸能界デビュー後、映画『ふたり』『学校』、大河ドラマ『義経』などに多数出演。2002年『納豆ウドン』で第23回BKラジオドラマ脚本コンクール入賞。NHK BS-2「週刊ブックレビュー」で司会者を務めたほか、新聞で読書エッセイを連載。書評も手がける。

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