中江有里さん(女優、脚本家)が語る、読書の喜びと本の選び方
年間300冊を読破するという、女優の中江有里さん。脚本や小説、書評などの執筆と幅広く活躍する中江さんに、読書の喜びと本の選び方、読み方について語っていただいた。
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子どもの頃から活字が好きで、読書は心が安定する場所でもあります。仕事で煮詰まっている時によく読み返すのが、向田邦子さん。あと、村上春樹さんの『風の歌を聴け』なども、「この文章の軽やかさは何だろう」と思いながら、何度も読んでいます。どっぷりつかれる本は、まるでお気に入りの温泉のようなもの。気持ちをリフレッシュできます。
私は、持ち歩きにはこれ、寝る前に読むのはこれ、といった感じで、何冊かの本を同時に読み進めています。穏やかな気持ちになれるエッセイ集を読んだら、ミステリー小説を読んでみたり、重厚なノンフィクションを読んでみたり。違ったジャンルのものを組み合わせると、目先が変わるから飽きないし、読むのが新鮮で楽しいです。
受け身だとなかなか本に出合えないと思っているので、新聞や雑誌などを読む時は、必ず書評欄に目を通しています。本を探しに書店に行くことも多いですね。いろいろ眺めて、タイトルや取り上げている題材、装丁、そういうのを全部含めて気になるものを買い求めます。
本との出合いの機会としておもしろいなと思っているのが、「ビブリオバトル」。何人かが本を持ち寄って一人5分でその本の魅力を紹介し、どれがいちばん読みたくなったかを観客の投票で決める書評ゲームです。
自分と合わない本に出合っても、損をしたとは思いません。わからなくても1回その世界に浸ってみます。1行でも自分と共感するものがあればいい。その1行に引っかかったことによって、またどこかで自分の知らない世界にめぐり合えると思っています。