4人の子を東大に合格させた佐藤ママに聞いた、家庭学習の工夫とテレビやゲームとの付き合い方
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4人のお子さんを東大理Ⅲに合格させた経験から多くの著書を執筆し講演などでもご活躍されている“佐藤ママ”こと佐藤亮子さん。新刊『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』(ダイヤモンド社)発売を記念して、詳しくお話を伺いました。後半では、佐藤さんが子どもに寄り添いながらどんな生活を過ごしていたか、さらにご主人との関わり方やお子さんが進路をどのように決めたのかについてお話を伺いました。
佐藤家の学習方針は妻主導、夫は見守るスタンス
__中学受験は「夫婦ともに同じ目標を立てないと家庭内の雰囲気が悪くなる」と言われていますが、夫婦で意見が食い違うことはありませんでしたか?
主人に相談したのは1回だけ。「長男が1歳半の時に、公文にいれたいけど、どう思う?」と。その時は「とりあえずやってみたら? いいとこ取りしたらいいんじゃない」と言われて。私はこの“いいとこ取りでいい”という考えは今でもすごく気に入っています。子どもも一人一人違いますから完璧や完成なんてさせなくていいという考えです。それは夫婦のベースとしてはあったと思います。
ただ、基本的に主人は、なんでも私に任せるというスタンスなので、私が主導で進めてきました。一度、長男が小6の夏、勉強が忙しい時期に、主人が「可哀そうだね」と言ったので「そのことばはだめでしょ!二度と言わないように」と厳しく言ったことがありました(笑)。
可哀そうなのは「勉強したくてもできない状態」と「試験に不合格だった時」だと説明すると主人は納得していました。
子どもたちを観察して学習の工夫することが楽しくて苦にならなかった
__ある時期は睡眠時間が2時間だったと著書にもありましたが、子どもの勉強中心の生活で、佐藤さんやご家族はどのように息抜きされていましたか?
よくそう言われるんですけどね、私は全然大変ではなくてむしろすごく楽しかったんです。小さくて可愛い子どもたちが成長していく姿を見るのはすごく幸せでしたよ。
私が高校教師をしていた時、高校の英文法や単語が難しく、しかも量が多すぎて覚えられないため生徒が苦しんでいるのを見て、そこまで子どもたちが苦労をしないで学習を進めるのはどうするかをずっと考えていました。その時の経験をもとに学び方を工夫して子育てに活かしてきたということなのです。
そのうちに、「基礎学力は早めに始めることが有効」と分かってきたし、「細かい文字のプリントは拡大コピーしてノートに貼るとスラスラ解ける」など、やり方次第で子どもは積極的に学ぶことができると気がつきました。私が思い付いたやり方を子どもたちにさせてみて実際効果が出たりするのを見るのは、人間とはなにか?を考えるのに大いに役に立ちました。人間観察や日々の試行錯誤が楽しかったんだと思います。私の方法も上達してきて4番目の長女はノウハウの蓄積のため、より楽しく親子でラクにできるようになっていました。
思う存分手をかけた子どもたちは、大学生になって気持ちよく飛び立っていきました
__4人もお子さんがいると、それぞれ勉強の調子がいい時期と不調な時期などあると思います。佐藤さんはどのようにサポートしていたのでしょうか?
子どもたちの勉強のことはプロの先生に相談していました。そもそも人間は調子のいい時もあるし悪い時もありますから、そのことで私が感情的に悩んだりはしませんでした。私は基本的にあまり深く悩まない性格なので何があっても愚痴ることもしなかったです。困ったことがあれば箇条書きに書き出して一つひとつ解決することにしていました。母親が悩んで暗くなったりということがなかったので、子どもたちも明るい性格に育ったという感じですね。家の中の雰囲気や空気感はやはり母親が作りますから、とにかくいつも明るいお母さんでいることにしていました。
我が家は、子供部屋をつくらず大学入学まではリビングで勉強していました。寝るまではずっとリビングにいて、そこに置いているこたつの長テーブルで肩を寄せ合いながら過ごしていたんです。遊びも勉強もずっと一緒にしていました。
勉強を始める時間を4人で同じにして一斉に始めることにしていたので、上の子の勉強を下の子が邪魔をするということは全くなかったですね。
こたつは4辺あるのになぜか1辺に3人座って勉強するので、ぎゅうぎゅう詰めで、ひな鳥の巣状態でした(笑)。しかも、3辺が空いているのに、一番下の娘は並んで座っている3人の兄たちの間に入り込もうとするのです。その時、みんなで「ここに入るの〜」と大笑いしていました。子どもの時期ってこういう家族との物理的に近い距離って大事なんじゃないかと思うんです。それぞれの部屋で過ごしてご飯の時間だけ集まって話すだけでは、実は関わりが足りないのかなと思いますね。我が家はそのためか、子どもたちは今でも仲がいいし助け合っているようです。
物理的な距離の近さが佐藤さんの家族の結束の強さにつながっている
私はといえば、4人分の子育ては26年間でしたが、思う存分子どもに関わってきたので、子どもたちは大学入学を機に外に飛び立っていきましたが、私なりにやり切ったという感じはします。大学入学以降の子どもたちにはほとんどノータッチです。元気に楽しくやってくれたらいいなと思うだけです。子どもたちも医師になりましたが、どこの病院にいるのかなどはよく覚えていないくらいなのです。
TVやゲームのルールは守れないのは当然のこと。そもそも与えた親の負け
__お子さんたちは勉強以外の自由な時間時間はどれくらいあったのでしょうか? そんな時は何をしていましたか?
4年生なんて週3の塾だけですから、相当自由でしたよ。ただ友達のうちに行かなくても、きょうだいが多いのでよく一緒にトランプやUNO、カルタ、将棋とオセロ、囲碁なんかをして遊んでいましたね。トランプは家族でもすごくハマって、人数が多いので一度に2セット混ぜてババ抜きをしたり。旅行の際はいつもトランプをたくさん持って出かけていました。
テレビはみせず、ゲームは買いませんでした。友達の家に遊びに行った時には、やってもいいことにはしていましたが。TVに関しては、家族で時どきスポーツを見る程度。きょうだいが4人いると見たい番組が違ってもめたりすると時間管理ができないかなと思って元々見ないということにしていました。子供番組の内容を知らないことで、学校の友達に何か言われたら「うちはママの方針で見ないから」とはっきり言えばいいと伝えていました。見たことのない流行りのアニメの話になったら「知らないから教えて」と言って友達から教えてもらっていたらしいです。
私は、「問題は起きてからどう対処するかより、起きないようにする方が成功率は高い」と思っています。だから、TVもゲームもルールを守れないのなら、与えた親の負けということなのです。
長男が小4の時に「ドラえもんを一度観たい」と言ったので、みんなで見ることにしました。他の子どもたちも見たかったらしく喜んでいましたが、なんと4人で正座して観ていました。そのドラえもんの内容が、「のび太君が計算ができずお母さんに怒られる」という回だったんです。それで、私が「のび太くんのママもあの言い方では勉強しないよね」とか「ドラえもんは暇なんだからのび太君の横にいて宿題を見てあげないとね」などとつっこみまくったら、「ママ、のび太君は中学受験しないんだよ」と子どもに言われました(笑)。私が「また来週も観ようか?」と聞いたら、私のコメントがうるさ過ぎたらしく子どもたちは「もういいです……」ということで、ドラえもんを見たのはそれが最後でした。
とはいえ、5年生まではまだ余裕がありますから、夏休みなんかにドラえもんとかコナンの映画には行ったりしましたよ。中学に入ってからは観たいTVは観ていいことにしました。
なんでも物理的な距離って大事で、例えばハサミでも手の届くところにあればすぐ使うけど、離れたところに置いていたらすぐには使わないじゃないですか。だからリビングに勉強道具を置いて、TVは2階においたのは非常に有効でした。いわば家の中なので、そこまで遠距離ではないのに、わざわざテレビを見に2階には行かないものなのです。だから、子どもにやらせたくないものは物理的に遠ざけることもコツですよ。
灘も東大も進路のアドバイスは一切なし!お子さん4人ともが医師を目指した理由
__お子さんたちは皆さん医学の道に進まれていますが、進路に関しては何かアドバイスされたのでしょうか?
それが灘や東大に行くのは、私は一切アドバイスしてないんです。私が学校の固有名詞を口に出すと、もし行けなかったら本人が傷つくし負い目になるかなと思って言わなかったのです。それぞれの受験の時も一生懸命頑張って手が届く中学校や大学に行けばいいなと思っていたのです。ただ、灘に行ったから東大を目指すのが自然になってしまったというのはあるかもしれませんが。
文系と理系に関しても、子どもたちは社会があまり好きじゃないから理系に。でも、灘って数学や物理のオリンピックで金賞を取るようなレベルの子が何人もいるんです。それで息子たちは、そこまで数学や物理が好きでもないし選択するほどはないのでそれならばと専門職を目指すようになったようです。私は何の仕事でもよかったんですけど、主人が弁護士で、自分の事務所で自分のペースでやりがいを感じて仕事をする父親の姿を見て、専門職が楽しそうだなと思ったようです。それで、次々ときょうだいの様子を見て楽しそうだなと東大理Ⅲや医学部に続いて行ったのだと思いますね。
東大はすごくいい大学だと思いますが、受験をするのにあまり苦手な科目があると合格が難しくなりますから、まんべんなく点がとれるように準備をした方がいいですね。
まとめ & 実践 TIPS
「TVもゲームもルールを守れないのなら、与えた親の負け。物理的に距離を作ればいい」というお話はさすがの説得力でした。「思いっきり手をかけたので、何の未練もない」という佐藤さんのお話を聞いて、子どもが18歳になった時のことを考えてしまいました。お子さん4人が東大に合格された佐藤家の秘策には、全力で寄り添った家族の絆もあるのかもしれませんね。
取材・文:加藤朋美
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