学校へのタブレット導入はこれから!?-渡辺敦司-

タブレット端末やスマートフォン(スマホ)は、徐々に仕事や社会生活で欠かせないものとなりつつあります。学校でも、単に学習効果を高めるだけでなく、21世紀に求められる能力を育成するためのツールとして必須だという声が徐々に高まっています。ただ実際の普及はまだまだこれからという段階であることも確かです。

文部科学省が新聞報道などをもとに確認したところ、タブレットの導入や拡張に取り組んでいる自治体は7月1日現在で109自治体ありました。実際にはもっとあるかもしれませんが、全国の自治体の1割にも達していません。別のアンケート調査では、2014(平成26)年3月現在でICT (情報通信技術)環境の整備計画があるとしたのは24.8%(449自治体)、今年度中に策定予定だとしたのは6.3%(114自治体)ありましたが、68.9%(1,246自治体)と大半が整備計画「なし」と答えていました。
国の第2期教育振興基本計画(2013~17<平成25~29>年度[外部のPDFにリンク])では、教育用パソコン1台当たりの児童・生徒数を3.6人とすることを目指し(13<同25>年3月現在は6.5人)、電子黒板や無線LANの整備などと合わせた自治体の所要額として14(同26)年度から4年間、毎年1,678億円(総額6,712億円)が措置されることになっています。これによって不足する約147万台の教育用コンピュータの新規導入分や既存の約191万台のリース費用が賄える……はずです。
ただ、こうした予算措置は、使途を限定されない地方交付税によるものであるため、各自治体が予算を組まなければ何にもなりません。その点で、整備計画を立てる予定のない自治体が3分の2を占めているというのは、たいへん気になる現状です。

一方で、東京都荒川区が2014(平成26)年9月から、全小・中学校に1人1台の利用が可能となるよう、タブレット端末約8,300台を導入(モデル校には昨秋1,200台を先行配備)したり、大阪府堺市が全普通教室(約1,500教室)に加えて今年度中に特別支援学級や特別教室(約500教室)にもタブレット端末を整備したりするほか、佐賀県武雄市も来年度までに全小・中学生にタブレット端末を貸与する計画を立てるなど、まだまだごく一部ですが本格的に1人1台環境を整備しようという動きが出てきています。
政府が6月24日に成長戦略の一環として閣議決定した改定「世界最先端IT国家創造宣言」(外部のPDFにリンク)では、2010年代中に学校はもとより家庭ともつながる教育・学習環境を構築するとしています。学校での環境が整備されなければ、家庭ともつなげることはできません。今後、各自治体の積極的な対応が求められますし、それには学校現場や保護者などが声を上げる必要もあるでしょう。

夏休みに入りましたが、近い将来は宿題や自由研究も全部タブレットを使って行う時代が来るのかもしれません。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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