全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)、結果の活用にも多様な意義

今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)も、すべての国公立と、半数近くの私立の小・中学校の参加により行われました。先の記事でも振り返ったとおり、2007(平成19)年度から今のような形で始まった全国学力テストは、昨年度までに6年分(11<同23>年度は中止)もの膨大なデータが収集され、各自治体や学校で学力向上のための取り組みと、児童生徒一人ひとりに確かな学力を付けさせるための授業改善に役立てられています。さらに来年度は「経年変化分析調査」(外部のPDFにリンク)も行われる予定です。

経年変化分析調査は、国全体の学力状況を把握し、今後の教育施策の検証・改善に役立てるためのものです。出題されるのは、本調査と同じように国語と算数・数学のA(主として「知識」)・B(主として「活用」)問題。「児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善」という全国学力テスト全体の目的とは少し違うため、悉皆(しっかい、全数)方式ではなく抽出方式で行われます。そのため本調査とは時期をずらして、来年5 月中旬~6月下旬に、各学校で実施可能な日時に行うことにしています。また、調査問題は複数の分冊にし、抽出された学校に割り振ることにしています。こうした方式はPISA(経済協力開発機構<OECD>の「生徒の学習到達度調査」)でも採用されており、全体の状況を把握するには合理的な方法です。過去との同一問題が出題されるという性質上、調査問題は原則非公表とされます。

この経年変化分析調査は、13(同25)年度に第1回が行われています。初回でしたから、どのように学力が変化したかは、2回目である2016(平成28)年度調査の結果を待たなければなりません。ただ、この第1回調査の中には、過去の全国学力テストなどで出題された問題も含まれており、それによると、小学校国語で16問のうち正答率が3ポイント以上高かった問題が9問ありました。同様に、小学校算数では16問中5問、中学校国語では13問中5問、中学校数学では19問中5問となっており、全体では出題64問中、正答率が3ポイント以上高かった問題が24問と3分の1を超える一方、37問と半数以上が3ポイント未満の変化にとどまりましたが、3ポイント以上低くなった問題は3問(いずれも算数・数学)にすぎませんでした。これを見る限り、学力の低下は起こっておらず、むしろ向上していると判断できるでしょう。
また、本調査の結果から得られた課題の改善のために、授業アイデア例や事例集をまとめて各学校の参考にしてもらったり、教育格差に関する追加分析調査などを行って自治体の教育政策立案に生かしてもらったりするなど、多様な活用が行われています。

全国学力テストの出題教科は現在、国語と算数・数学、そして3年ごとに理科と、一部の教科の、しかもペーパーテストで測定できる範囲の内容に限られます。しかし、それでも日本の基礎的・基本的な学力の動向を把握し、更にその学力を向上させるとともに、それをもとにした幅広い学力を培うための、さまざまな意義を持つ「調査」だといえるでしょう。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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