理科のニガテ、どう克服する? [中学受験] 4年生

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。4年生の冬休み、克服しておきたい理科の苦手克服について取り上げます。



■科学的なものの見方は、感覚だけでは身に付かない

理科は、思い込みをしやすい教科です。たとえば、月の満ち欠けや星の見え方の理屈など、一度間違った考え方で覚えてしまうと、大人になってもそのままということがよくあります。これは、科学の原理・原則が、感覚的に受け入れやすいものとは限らないためです。たとえば「物体の落下速度は、重さによらず一定である」という法則がありますが、ガリレオがピサの斜塔から大小2つの鉛の玉を落とし、落下速度を比べる実験を行うまでは、長い間「重い物のほうが、軽い物より速く落ちる」と信じられてきたわけです。

中学・高校でも、理科は必ず実験や観察・観測を行ってから原理・原則を学ぶという流れになっていますね。落下速度の法則を、本を見て丸暗記しても、「あれ? でも、羽と10円玉を一緒に落としたら、絶対羽のほうが遅く落ちるはずなのに……」と、すっきりしない気持ちが残ると思います。その結果、法則そのものがうろ覚えになったり、間違った考え方で自分を無理やり納得させてしまったりしがちになるのです。
真空ポンプで空気を抜いた容器の中では、羽とコインは同時に落ちます。このような実験をすると、「空気の抵抗がなければ、落下速度は同じなんだ!」と納得がいき、法則そのものが胃のふに落ちるのではないでしょうか。



■理科が得意な子は、何らかのフィールドワークをしている

4年生の2学期の時点で、お子さまは理科が苦手だなと思ったら、ぜひ実験や自然観察などのフィールドワークを取り入れてください。5、6年生になると塾の勉強が忙しくなりますので、少し時間の余裕がある今がチャンスです。できれば毎週ないし隔週に一度、2時間以上時間を取っていただくと、大きな効果があります。キッチンやお風呂場でできる実験、もののしくみや働きが実感できるちょっとした工作、月や星、草花や鳥・昆虫など、四季折々の自然観察、科学館や博物館の見学もよいですし、同年代の友達と一緒に、楽しみながら実験ができるサイエンス教室などを利用するのもおすすめです。理科が得意な子は、遊びや休日の外出などを通じて、たいてい何らかのフィールドワークをやっていますね。



■身近な「理科好き」にアドバイザーを頼もう

フィールドワークといってもどうしたらいいかわからない場合は、ぜひ理科が好きで、得意なかたに先生役を頼みましょう。ご親戚やお知り合いに、理系の大学生や大学院生で子ども好きなかたがいれば、とてもよいですね。理科の好きなかたが、目を輝かせて実験や自然に接する姿を見るだけでも、理科的な感覚は身に付きます。「ひょっとして、理科、楽しいのかな?」とお子さまが思えるようになれば、それだけでも大きな進歩です。



■「準備→実験・観察→考察」の流れを大切に

実験には、準備も大事です。どんな材料と器具をそろえ、どのような手順で行えば正確な結果が得られるかを考えなくてはなりません。また、実験の結果を見て結論を導く「考察」の時間も大切。ですから、サイエンス教育に力を入れている学校では、実験の準備から考察まで通して行えるよう、理科の授業は2時限使うところが多いんですね。準備→実験・観察→考察という流れを身に付けることが理科では大切です。
中学受験でも、この流れを意識した出題をする学校は数多くあります。たとえば東京の?友学園中学などでは実験器具の扱いや準備のしかたについて問う問題がよく出ますし、毎回石ころや葉っぱなどの実物が出てきて、それらについて観察し、わかることを述べよという武蔵中学の問題形式は有名です。これは、昔の東京大学の入試を踏襲した形式で、知識ではなく観察のしかたが問われているわけです。



■「科学的な考え方」は結局長持ちする

普段、学校では理科の授業は1時間しかないので、実験をしたら「やりっぱなし」になりがち。また、理科の教科書には実験のしかたが書いてあるだけで、実験の結果を通して原理・原則を導く「考え方」の部分が詳しく説明されていないものがほとんどです。
ですから、ご家庭で理科を学ぶに当たり、ぜひ実験・観察を取り入れると同時に、原理・原則についての考え方をわかりやすく解説した参考書を用意してください。また、お子さまが興味を抱いた時にさらに調べられる、図鑑の類も用意しておくとよいでしょう。
「実験なんか真面目にやらなくても、結論だけ覚えればいい」というあしき効率主義が、子どもだけでなく、一部の大人にも蔓延(まんえん)していますが、これは大きな間違いです。丸暗記の知識はその場で消えてしまいますが、実験・観察によって得られる科学的なものの見方は、たとえ理系の進路に進まなくても、一生役立ちます。4年生の間にたっぷりと実験・観察を行っておくと、5、6年生以降には、本を読んだだけで「あのことか」とピンとくるようになる。実体験によって、知識が体系的に身に付くようになるのです。理科が苦手なかたこそ、今のうちに実験・観察の「貯金」を行っておくことをおすすめします。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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