もうすぐお泊まり行事! どうする子どものおねしょ(夜尿症)対策(3)最新治療編

小学校に上がってからも夜尿がある場合には、お子さまが自信を喪失し、心理面・社会面・生活面にさまざまな影響を与えることがあります。連載1回目2回目でご紹介したように、積極的に治療を行うことで治療を受けていない場合より早期に夜尿が消失することが期待できます。そこで今回は、夜尿症の専門医である昭和大学藤が丘病院の池田裕一先生に、最新の治療法について伺いました。



治療法は薬物療法かアラーム療法

前回ご紹介した生活改善を1か月間続けてもよくならない場合は、生活改善に加え、薬物療法かアラーム療法によって治療を開始します。どちらも効果はほぼ同じぐらいですので、医師と相談しながらお子さまに合った治療をお選びいただけばよいと思います。どちらの治療法も1か月に1回程度の通院をしていただき、2~3か月間ぐらい様子を見ます。

●薬物療法(ミニリンメルト® OD錠)
人間の体内には尿を濃くして尿量を減らす、抗利尿ホルモンというホルモンが分泌されていますが、夜尿症のお子さまの中にはこのホルモンの夜間分泌が少ない場合があります。この抗利尿ホルモンを薬で補うことができます。従来は点鼻薬だけでしたが、現在はより手軽な内服薬「ミニリンメルト®OD錠」の使用が広まっています。夜1回、水無しで服用できるタブレットタイプのお薬で、海外で広く使われているものです。夜尿症患児の約70%に効果が認められ、アラーム治療と比べて速やかで短期的な治療効果があります。症例は少ないですが、副作用がありますので、医師に相談したうえで処方してもらいましょう。

●おねしょアラーム療法
おねしょアラームとは、寝る前にお子さまのパンツに小さなセンサーをつけ、おしっこでパンツが濡れるとアラームが鳴ってお子さまを起こす仕組みです。薬を使わないため、副作用の心配がなく、また、効果が出てくると自分でトイレに行けるようになったり、夜間の膀胱(ぼうこう)容量が増大して夜中に起きなくても朝までおねしょをしなくなったりするなど、劇的な改善も期待できます。治療開始4~6週間以内に効果が見られ、ほかの治療に比較して再発が少ないことがわかっています。種類にもよりますが、8,000円くらいから手に入ります。おねしょアラームの効果を確認して、次の目標を設定するためには医師の診察が必要になるケースが多いです。正しく使用するには、専門医の指導を受け、保護者のもとで利用させるようにしましょう。
おねしょ治療では、「起こさない」ことが原則とされていた時代もありましたが、最近の研究では子どもの脳波を調べてみると、脳の発達には影響しないと言われていますので、睡眠の質低下を心配される必要はないと思います。
ただ、アラームの音は比較的大きいので、家庭の環境や家族の理解が必要です。さらに、最初の3か月ほどは、お子さまが自分で起きることはできないので保護者がお子さまを起こしてトイレまで連れて行き、おしっこが残っていれば完全に排尿させる必要があります。そのため、本人やご家族に強いモチベーションがないと継続するのが難しいようです。
継続すると非常に効果が高い治療法であり、当院での事例では、3か月継続した場合の有効率は83%、6か月の場合、94%になっています。

薬物療法は2か月、おねしょアラームは最低3か月実施しても改善しない場合は、両方を合わせた治療をしていきます。ただ、「あと2か月で宿泊合宿がある」といった場合は、最初から薬物療法とアラーム療法を併用することも可能ですので、医師に相談しましょう。



お泊まり行事を乗り切るために

お泊まり行事が迫っている場合、完全に治療するのは難しいでしょう。しかし、下記のような手段で宿泊研修を乗り切ったお子さまもいますので、ぜひ参考にしてください。

・バイブレーションで時刻を知らせる腕時計をつけて就寝。夜尿しそうな時間に起きてトイレに行く。
・夜尿しそうな時間に、先生に起こしてもらってトイレに行く。
・友達が起きる前に先生に起こしてもらう。
・おねしょをしてしまったとしても、色の目立たないパジャマを着る。もしくは防水機能のあるパンツやパジャマを着用する。



お気軽に相談を

近年、大きな病院でなくても夜尿症に力を入れている病院が増えています。実際の診療では、お子さまの個人個人の特性に合った治療法やさらに細かいお泊まり対策などを教えてもらえることもあるので、ぜひお子さまと一緒に医療機関を受診してみましょう。


プロフィール


池田裕一

昭和大学藤が丘病院小児科准教授。小児科専門医。腎臓病専門医。専門分野は、小児腎臓・膠原病・夜尿症。「おしっこトラブルどっとこむ」を開設し、おねしょやおもらしでお困りの数多くの保護者からの質問に回答している。

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