高校生の海外留学が増加傾向に 国私立と公立で意識の違いも

グローバル化の進展の中で、「内向き」といわれていた若者の意識にも海外留学の希望者が増えるなどの変化が起こりつつあるといわれています。文部科学省がまとめた子どもの生活行動のデータ「高等学校等における国際交流等の状況調査」の結果によると、これまで減少・横ばい傾向だった高校生の海外留学が大きく増加に転じたことがわかりました。グローバル化の流れの中で今後、高校生の海外留学は増えていくことが予想されます。

同調査は2年に1度、文科省が実施しているものです。それによると、2013(平成25)年度に海外留学(3か月以上)した生徒がいる高校は1,879校(国立29校、公立871校、私立979校)で、留学した生徒数は3,897人(国立51人、公立1,104人、私立2,742人)となっています。高校生の海外留学のこれまでの推移を見ると、最近では2004(平成16)年度の4,441人をピークに、06(平成18)年度が3,954人、08(同20)年度が3,208人と2年連続して減少し、11(同23)年度も前回比49人増の3,257人とほぼ横ばいでした。ところが、2013(平成25)年度は前回比640人増の3,897人となり、大幅に増えました。高校生の海外留学は、増加に転じたと言い切って間違いないでしょう。ただし、9年前の2004(平成16)年度の海外留学者数は4,441人でしたから、それに比べればまだ少ないのが実情で、今後の推移が注目されるところです。

2013(平成25)年度の海外留学先を見ると、1位はアメリカで1,156人、以下、ニュージーランド847人、カナダ642人、オーストラリア454人、イギリス170人、ドイツ109人、フランス64人、イタリア36人、中国29人、メキシコ25人がトップ10となっており、やはり留学先としてはアメリカが多いようです。しかし、9年前の2004(平成16)年度はアメリカが1,727人、ニュージーランドが646人、カナダが586人、オーストラリアが741人、イギリスが243人でした。このことから高校生の海外留学先では、アメリカとオーストラリアの人気が落ち、かわってニュージーランドとカナダをはじめその他の国の人気が高まっていることがうかがえます。

一方、高校生全体の意識を見ると、「留学したい」が44%、「留学したいと思わない」が56%で、依然として留学に関心のない層が多いようです。ただし国公私立別に見ると、「留学したい」という生徒の割合は、国立が70%、公立が41%、私立が51%で、国立と私立では「留学したい」という生徒のほうが上回っています。国私立高校と公立高校の間には、海外留学に対する意識・関心に差があると言えそうです。海外留学したいと思わない生徒にその理由(複数回答)を尋ねたところ、「言葉の壁」が54%(国立49%、公立55%、私立50%)、「経済的に厳しい」が37%(各28%、38%、35%)、「留学方法、外国での生活、勉強、友達関係の不安」が32%(各39%、32%、32%)、「魅力を感じない」が29%(各37%、29%、30%)などとなっています。国私立高校に比べて公立高校では、語学力に不安を持っている生徒や、経済的負担を懸念している生徒が多いことが、海外留学に対する意識・関心の差となって表れているようです。

グローバル化の時代、望む者が海外留学できるよう公的支援策の充実が求められるところでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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