「教える」から「育てる」へ どうなる?5年後の学習指導要領 専門家が解説
2020(平成32)年以降の実施を目指す、学習指導要領の全面改訂。「何を教えるか」から「何ができるようになるか」を重視する方針が示されているこの改訂で、教科などの内容も大幅に見直されることになるという。教育ジャーナリストの渡辺敦司氏が解説する。
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これまでの指導要領では、教科などを越えて学校教育全体でどういう子どもを育てるかということは「総則」に書いてあったのですが、どうしてもその後の「各教科」などのほうが記述も多く、これまでの改訂では、各教科などの内容を足したり引いたりする改善が中心になっていた面が否めません。総則との関連を図るにしても、結局はその教科内での見直しにとどまっていました。学校の先生たちの関心も、指導要領の各教科の記述が反映された教科書がどう変わるのかに終始していたと言っても過言ではありません。
しかし今回の改訂では、まず学校全体でどういう資質・能力を育てるのかという大方針の下に、各教科ではそのうちの何を担当するのかという発想が求められます。教育界には「教科書『を』教えるのではなく、教科書『で』教えるのだ」という格言がありますが、それになぞらえれば、教科の内容「を」教えるというより、その教科「で」資質・能力を育てるということが、これまで以上に重視されることでしょう。
全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題で「活用」の力が問われているように、いくら知識をたくさん覚えても、実際に活用できなければ何の意味もありません。大学入試と高校・大学の教育を一体で見直す「高大接続改革」答申で、大学入試センター試験に代わる複数回実施の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を創設するよう提言したのも、活用の力となる思考力・判断力・表現力を中心に測ることで、高校と大学が一体となって、そうした能力を伸ばすよう促すためです。
もちろん考えるためには、一定の知識が不可欠です。だからこそ前回の改訂(現行の指導要領)では学力低下の懸念に応える形で、知識・技能と思考力・判断力・表現力などのバランスを取る改善が行われました。「育成すべき資質・能力」を中心とした今回の改訂では、更なる内容(知識)の見直しが求められることでしょう。
出典:教科の内容も大胆見直し? 指導要領の改訂論議スタート -ベネッセ教育情報サイト