「発展レベル」テスト、勉強の姿勢も変える必要‐渡辺敦司‐

大学入試センター試験に代わる「達成度(発展レベル)テスト」(仮称)の在り方を検討していた中央教育審議会が8月以降にまとめる答申で、その開始を「早ければ2021(平成33)年度」と明記する見通しとなりました。今の小学6年生が受験する年です。これからの大学入試はどうなるのでしょうか。どうやら単に入試方法が変わるだけではなく、受験に臨む姿勢、もっと言えば勉強に対する考え方そのものにも変更が迫られそうです。

まずは答申案(外部のPDFにリンク)から、「発展レベル」テストがどのようなものになるのかを見ていきましょう。現行のセンター試験は6教科29科目を2日間にわたって出題する「一発勝負」ですが、発展レベルは年2回(実施時期は明示せず)行い、そのため各回は1日で終えるとしています。それに合わせて「教科型」の試験だけでなく、「合教科・科目型」や「総合型」(外部のPDFにリンク)の出題も検討すべきだとしています。合教科・科目型は、たとえば地理で数学I(共通必履修科目)レベルのデータ分析力を必要とする問題といったようなものが考えられており、総合型は共通必履修科目の範囲内の知識・技能を組み合わせて実社会や実生活の課題を解決する力を問う問題が想定されています。以前の記事でも紹介したとおり、答申案でも具体的な出題の枠組みは専門家の検討に委ね、1年後をめどに結論を出すとしています。

しかし、なぜこんな出題の仕方をするのでしょうか。1日の試験日程に収めるには科目をまとめる必要があるという現実的な要請もありますし、選択科目を広げ過ぎたあまり問題配布ミスが起こったことへの反省があるのも確かです。しかし、もっと重要な点があります。発展テストでは知識だけを問おうとしているのではなく、「活用力」を重視しているからです。
これまでは、各教科・科目をそれぞれ勉強して単位を取り、高校を卒業できれば、自然と一人ひとりに社会に出てからも通用する力がついているだろうという想定の下に、学校の授業が行われてきました。しかし、変化の激しいこれからの社会に対応するためには活用力が不可欠であり、それを学校でも意識して生徒に着実に身に付けさせるような指導が不可欠だとされています。現行学習指導要領で教科・科目にまたがって「言語活動」の充実を求めているのも、活用力育成のためです。学校の教育活動全体をとおしてこそ、活用力は育まれるものです。「総合型テスト対策」の授業など本末転倒であり、合教科・科目の組み合わせが決まらないと高校のカリキュラムが組めない(受験対策ができない)などと考えるのは、発想が逆でしょう。

受験生にとっても、今までのようにテストでよい点を取るための受験勉強を第一に考えていては、これからの大学教育、もっと言えば社会で通用する力は、必ずしも身に付きません。普段の授業でも、主体的な学習姿勢が求められるでしょう。そのためにも達成度テストで1点刻みの成績提供をやめ、各大学では多面的・総合的な選抜をすべきだとしているのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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