学校貸与の一人一台タブレット、家庭での付き合い方と活用方法を考える

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いわゆるGIGAスクール構想がスタートし、全国の小中学生に一人一台のタブレット端末が貸与され、学習で活用するようになっています。学校だけでなく家庭での活用も進み、オンライン授業に活用された学校もあります。しかし、ICT教育が進みリテラシーが高まることが期待される一方で、この端末を使ってさまざまなトラブルが多発しています。どのようなトラブルが起きており、家庭ではどのように見守ればいいのでしょうか。

この記事のポイント

一人一台端末を持ち帰って活用中

GIGAスクール構想とは、全国の児童生徒に一人一台のタブレットと高速ネットワークを整備し、個別最適化された教育を実現するという構想のこと。元々5年かけて進めていく予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、急遽前倒しとなりました。

夏休み明け、新型コロナ感染拡大の懸念から、都心部の学校などでこの端末を使ってオンライン授業が行われました。昨年の一斉休校時にはできなかったことを思うと、ありがたいと感じた保護者は多かったのではないでしょうか。

筆者の息子は小学6年生ですが、Chromebookを貸与され、学校の授業では一時間に一度くらいは触れる機会があるようです。家庭でも、ネット上で課題が提出できる学習用ツール「Googleクラスルーム」で毎日のように宿題をしています。キーボードでの文字入力調べたいことを調べる力資料の作成など、いろいろなことができるようになっていると感じます。

音楽の先生からお手本となるリズムの動画が上がっており、家庭でまねをしてリズムを取っている姿を見かけたこともあります。タブレットやインターネットならではの教育は進化しており、コロナ禍の制限がある中でも学習が進めやすくなっているのです。

学校・家庭で起きているネットトラブル

一方で、保護者たちからこんな声も聞きます。

「家のパソコンもゲーム機も制限していたのに、学校のタブレットは制限がかかっていないので使い放題。子どもが一日中ゲームをして困っている
匿名で悪口を書いた子がいたそうで、書いた子が名乗り出るまでクラスの全員がタブレット利用禁止となっていた」
「うちの小学校では、アダルトサイトを見ていた子がいたそう。学校のタブレットなのにそのようなものが見られるのはおかしいのでは」

学校貸与端末で、具体的にどのようなトラブルが起きているのでしょうか。一般財団法人LINEみらい財団の「一人一台端末環境におけるICT活用と情報モラル教育の実践に関する調査報告書」(2021年8月)によると、過去一年以内に学級内でネットトラブルが発生した割合は、小学校は18.5%、中学校は39.3%でした。

発生したトラブルの内容は、小学校ではコミュニケーショントラブル(43.3%)、長時間利用による健康上の問題(47.5%)、不適切サイト(有害情報)の閲覧(40.8%)が多くなっています。その他、個人情報・プライバシー関連(15.8%)、なりすまし等のネットワーク上の不正行為(10.8%)などトラブルは多岐にわたります。ネットトラブルは、授業中を含む学校内だけでなく、家庭でも起きています

学校貸与端末は学校で授業中に使いますが、家庭でも利用できるようにと貸与されています。息子も、学校からのアンケートに回答したり、動画を見て感想を書く宿題や、カメラ機能で撮影、提出する宿題をやったりしました。自主的に気になった言葉やニュースなどを調べるようになった変化もあります。

このように家庭での宿題、調べ学習などでも使うため、「家庭では使うな」は無理です。そもそも気になった情報について調べたり、学習に活用したりするのはよいことであり、その部分まで制限すべきではありません

家庭のルール・約束を決め、見守りを

では、家庭ではどのように見守ればよいのでしょうか。

自治体ごとに利用端末や機能、制限内容はバラバラです。ほとんど制限していない自治体もあれば、夜間のアクセス制限をかけている自治体、特定のサービスに制限をかけている自治体などもあります。まず、お子さんの端末における制限内容、学校でのルールなどを把握しておきましょう。

なるべく制限しない方針の自治体もあり、そういう場合は家庭でルールを作り、利用を見守ることとされています。そもそも制限は完全ではないため、制限がかかっていても抜け穴を見つけて使っている例も少なくありません。家庭でもネットの危険性について子どもと話し合ったり、利用上のルールや約束事を決めたり、利用を見守ったりする必要があるのです。

家庭でのルールや利用時間などは、学校でのルールをベースとして、子どもと話し合って決めましょう。ゲーム、動画視聴などの具体的な禁止事項、一日の利用時間の長さなどを決め、随時利用状況を見ながら、ルールの見直しをしていきます。小さな子の場合はタイマーを活用したり、保護者のいる居間で利用させたりすると、約束を守りやすくなります。

なお、子どもはまだネットコミュニケーションがうまくできないため、子ども同士のコミュニケーションは約束事を決め、保護者が見守ったうえで利用させるのがおすすめです。

宿題の最中などに、学校でタブレットをどのように使っているのかを聞いたり、他の友達の書き込みなどを見せてもらったりして会話のきっかけとするのもいいでしょう。子どもや周囲でトラブルは起きていないか、困ったことはないかなどを聞いてみてください。心配なことがあれば、担任教諭に相談し、連携して解決していくことも必要です。

遊びにしか使えていないのは、正しい活用のしかたがわかっていないからかもしれません。タブレットは、子どもの興味関心に合わせて学びを深めるために活用できます。保護者が子どもの興味をひきそうな学習サイトやアプリを教えたり、気になった言葉を調べることを促したりすることで、子どもも徐々に正しい活用のしかたがわかってきます。

せっかく一人一台の端末が与えられたのです。この機会に、親子間でネットやタブレットの使い方を考え、学びを深めるために活用してみてはいかがでしょうか。

執筆/高橋暁子

プロフィール

高橋暁子

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
SNSや情報モラルリテラシーが専門。執筆・講演・監修・メディア出演を手掛ける。小中高校、大学などでSNS研修講師を多数行っている。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』など、テレビ出演も多数。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)などSNS関連の著作多数。令和3年度教育出版中学校国語の教科書にコラム掲載。元小学校教員で一児の母でもある。

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