災害時に命を守る学校施設はどうあればよい? ‐斎藤剛史‐

東日本大震災の発生から3年がたちました。しかし、その経験から多くのことを学んだにもかかわらず、現在の公立学校の防災機能の整備は遅れているのが実情です。そのような中で文部科学省の協力者会議は、避難所としてどんな機能や施設を備えたらよいかを提言した報告書をまとめました。

東日本大震災では多くの学校が住民の避難所となりました。長期間にわたる避難所運営の中ではトラブルも少なくありませんでしたが、それは避難所となる学校にどんなものが必要なのかということを示す貴重な教訓でもありました。ところが、以前の当コーナーでもお伝えしたように、非常用通信機器・自家発電装置・学校敷地内の備蓄倉庫などの防災設備の整備率は5割を下回っており、地域の避難所となる公立学校の防災機能の整備はあまり進んでいません。このため文科省の協力者会議は、震災から得た教訓をもとに災害に強い学校施設の在り方についてポイントをまとめました。
このうち避難所となる学校施設の在り方を見ると、震災による避難生活の中でトイレ、暖房設備、給水・上水設備などで問題が多く発生したほか、震災からしばらくしてからは学校として教育活動の再開で問題が生じたと分析しています。そこで報告書は、学校が避難所となってから避難が解消するまでの過程を次の4段階に分けました。

(1)救命避難期(発生から避難直後まで)
停電になっても情報を確実に入手して円滑な避難行動を取る対策が必要。
(2)生命確保期(避難直後から救援物資が届き始めるまで)
必要最低限の避難生活を確保するための食料・物資の備蓄、トイレ対策、救援要請の通信設備などの対策が必要。
(3)生活確保期(救援物資が届き始めてから教育活動を再開するまで)
プライバシーの確保、畳スペースの確保など良好な避難生活を送るための対策が必要。
(4)教育活動再開期(教育活動の再開から避難所閉鎖まで)
教育活動を円滑に行うため、避難所と教育活動のゾーン分けなどを工夫することが重要。

学校施設には食料・飲料水などを備蓄しておくほか、無線設備、停電対応の校内放送設備、可搬式発電機、炊き出し用のLPガスとガスコンロなどに加え、断水に備えて簡易式トイレやマンホールトイレなどを必要な数だけ確保しておくことが重要だとしています。さらに、災害時の避難者数を的確に予測しておき、避難者の居住スペースや運営に必要な管理スペースの設定、炊き出しスペース・着替えスペース・救援物資保管スペースの確保、障害者・高齢者・妊産婦・感染症患者などの専用スペースなどを盛り込んだ「避難所としての学校施設利用計画」を学校ごとに策定しておくよう求めています。もちろん、学校施設が耐震性・耐火性・断熱性を持ち、バリアフリーであることは基本条件です。

災害はいつ起こるかわかりません。ここで避難生活をするかもしれないという目で、保護者も学校を点検しておくことも必要でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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