学校のICT化や保育現場のデジタル活用が加速 デジタル×リアルで教育の価値を高める

コロナ禍で子どもたちを取り巻く教育環境が大きく変化しています。小学校以降では「GIGAスクール構想」の実現が加速され、幼児教育においてもさまざまな変化がみられます。今回は幼児教育とデジタルメディアの関わりを長年研究されている愛知淑徳大学の佐藤朝美先生に「コロナ禍で教育はどのように変わるのか?」「変わっていく変化を前に、私たちが親としてできることは何なのか?」について、詳しくお話を伺いしました。

この記事のポイント

子どもたちの教育環境は、コロナ禍で大きく変化

コロナ禍の2020年、急速に求められたのが学校のICT化でした。ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術のこと。学校のICT化とは教育において情報通信技術が活用されることを指します。学校のICT化が進むと、たとえば離れた場所同士をつないで遠隔授業を行ったり、タブレットを介してクラスのみんなと情報を共有したり、電子黒板を活用したり……幅広い教育活動が可能になります。

昨今の一斉休校の際には、学校現場ではオンラインを活用した授業や課題の管理など、ICT化の必要性に迫られました。また、2019年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」では、児童生徒1人1台コンピュータを実現すること、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、全国の学校現場で持続的に実現させることを目的として掲げています。

自治体や学校単体によってその整備度合いはまちまちですが、今後は政府主導のもと、教育現場のICT化はますます加速すると考えられています。

保育現場でも広がるデジタル活用

では、就学以前の状況はどうでしょうか。保育園再開後もオンラインを使ったサービスが広がっているようです。例えば保育士が歌やダンス、さらには手洗い動画等を提供するようなオンライン保育や、子育ての悩みに答える動画のサービス等が開始されています。保育の現場のICT化では、デジタル教材やアプリを導入している園も増えつつあります。

たとえば「KitS(きっつ)」というデジタルカリキュラムでは、子どもたちがクリエーティブな活動やチームワーク活動に関心をもち、成功体験を得ることを目的とした教材を備えています。その中のひとつ「ごっこどうぶつえん」というアプリでは、デバイス上でカラフルなペンやスタンプを使って象の模様をデザインしたあと、展開図を紙に出力しペーパークラフトとして立体工作を楽しみます。

このような活動を通して、デジタルとアナログのよさを両立しながら、豊かな感性がはぐくめそうですね。また「とりえ」というアプリ教材では、チームで協力して園内を自由にめぐり、デバイスを使っていろいろな色の写真を撮ります。最後にはクラスで持ち寄った写真の一つひとつがステンドグラスのピースとなり、ひとつの絵を完成させることができます。デジタル教材のよさを生かしながら、チームで協力して課題を解決する力が身につきそうですね。

参考:株式会社スマートエデュケーション「KitS(きっつ)」
http://kdkits.jp/

海外の保育現場でも、乳幼児期にデジタル教材を活用する研究は進んでおり、子どもの遊びをより豊かにするツールとして積極的にICTが取り入れられています。たとえば、ふだん行っている人形遊びを写真に撮って、編集してひとつのお話を作り上げる活動などがあります。デジタル教材を取り入れた新しい遊びの活動は、今後も世界規模で広がっていくことでしょう。

デジタルとリアルのバランスが大切

ますます情報化が進むこれからの未来を考えると、保育現場でのデジタル活用の導入はポジティブな印象がもてますね。しかし、このまま子どもたちをデジタル漬けにしてよいのか、という議論もあります。

たとえばVR技術で簡単に仮想の森に行くことができれば、もう外へと繰り出す必要がなく、森の体験ができてしまいます。移動の手間もなく、何の準備もせずに着の身着のまま森へ足を踏み入れ、そこでけがをする心配もありません。

しかし、それはあくまでも擬似体験。デジタル機器は利便性が高い一方で、リアルでしか体験できないことが確実にあります。デジタル体験が普及するこの時代においては、リアルの森へと足を運び、自然の空気や土の匂いを感じ、小鳥のさえずりや木々のざわめきに耳を傾ける体験が、より一層必要となるのではないでしょうか。

リアルとデジタルのバランスを大切にして、あえて人と対面して話す、自然の場へ赴く、肌のぬくもりを感じるスキンシップをとる……。そういったデジタル空間ではできないことを、今後デジタル化が加速されればされるほど、より一層意識して子どもたちには体験させてあげたいですね。

まとめ & 実践 TIPS

withコロナと言われる時代に、教育のICT化は欠かせません。これからの時代、子どもたちも私たち親も、教育のICT化の波に翻弄されることでしょう。しかし、あらゆるものがデジタルに代わっていったとしても、リアルの大切さを忘れずに子どもたちにも伝えていきましょう。デジタルとリアルのバランスを適切に保ちながら、子どもたちの教育がより豊かになることを社会全体で目指していけるとよいですね。

プロフィール

佐藤朝美(さとう・ともみ)

愛知淑徳大学人間情報学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程、情報学環助教、東海学院大学子ども発達学科を経て現職。教育工学、幼児教育、家族内コミュニケーション、学習環境デザインに関わる研究に従事。日本子ども学会(理事)。オンラインコミュニティ「親子de物語」で第5回、「未来の君に贈るビデオレター作成ワークショップ」で第8回、「家族対話を促すファミリー・ポートフォリオ」で第11回キッズデザイン賞を受賞。

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