どう変わる? 学校の健康診断 座高など廃止、新たな項目追加も‐斎藤剛史‐
学校時代の健康診断には、さまざまな思い出がある人もいるかと思います。その健康診断について文部科学省は、2016(平成28)年度から検査項目のうち「座高」と「寄生虫卵検査」を廃止する一方、新たに「四肢の状態」という項目を追加することを決めました。学校の健康診断の風景が、少しだけ変わることになりそうです。
学校の健康診断のうち「座高」は、1937(昭和12)年度から検査項目に加わりました。当時の徴兵検査の中に座高があり、それにならったともいわれています。戦後もそのまま残っていましたが、データ的には身長と体重だけで十分として座高測定を疑問視する声もありました。しかし、国中のほぼすべての子どもたちの身体データを毎年測定する日本の学校の健康診断は、世界的にもほとんど例がない取り組みで、一度項目を廃止するとデータが途切れるため、医学関係者などが廃止に強く反対していました。ところが、文科省の検討会が調べた結果、座高のデータを活用した研究が実際には少ないことが判明しました。さらに、座高を低く見せようとして子どもたちが背を丸めたりして、測定に時間がかかるという批判が学校関係者の間で多かったこともあり、ようやく廃止が決まりました。同じような経緯で廃止になった例としては、1995(平成7)年度からなくなった「胸囲」測定があります。
また、ぎょう虫などの「寄生虫卵検査」は1958(昭和33)年度から始まりました。当時の子どもたちの寄生虫発見率は約3割でしたが、水洗トイレの普及など衛生環境の改善により現在の発見率は1%未満に低下しているため、廃止することになりました。
一方、新たに加わる「四肢の状態」は、「四肢の形態及び発育並びに運動器の機能の状態」を観察するもので、まっすぐ立っていられない、和式トイレなどにしゃがめないなど運動不足が原因で筋肉・関節・骨などの発達に問題があると思われる子どもが増えたことに対応するのが狙いです。
また運動不足だけでなく、野球やサッカーなど過度に特定のスポーツばかりしてきたことなどに起因する障害なども調べることにしています。具体的には、家庭で書く保健調査票などをもとに学級担任・体育教諭・養護教諭などが判断して、医師が検査するということになりそうです。このため高校では1年時のみに限定されている家庭での保健調査票の記入を、小・中学校と同様に全学年に義務付けることにします。
文科省は今後、これらの診断の具体的な手順や方法などを示した学校向けマニュアルを作成し、配布する予定です。
このほか色覚検査は、差別の助長につながる恐れがあるとして2003(平成15)年度から廃止されました。しかし、色覚異常があることに気が付かないまま社会人となる者が増えてきたという指摘があり、資格取得などの際に問題が生じるケースもあります。このため文科省は、本人や保護者の同意があれば健康診断で色覚検査を実施できることを保護者に周知し、子どもに将来の不利益を招かないようすることを、教育委員会や学校に求めています。