子どもの円形脱毛症 【後編】

前回に引き続き、子どもの円形脱毛症について、その原因や症状、対応法などを、りかこ皮フ科クリニックの佐々木りか子院長に教えていただきます。今回は、円形脱毛症の治療法と、間違えやすい症状についてご紹介します。



円形脱毛症の治療法

円形脱毛症の治療法としては、一般的にはリンパ球の作用を抑えるステロイドの外用薬を使います。この塗り薬は、特に初期に効果を発揮します。ほかには、血行をよくするための外用薬や内服薬などを用いたりします。さらに重症の場合は、局所免疫療法というリンパ球を別の場所に誘導させる療法や、紫外線照射療法を行ったりします。また、脱毛部分をカバーするために、義髪を用いるかたもいらっしゃいます。いずれの場合も、専門医に相談しながら対応されることをおすすめします。
ただし、原因がよくわかっていないため、画期的な治療法があるわけではありません。単発型は放置しても半年~1年ほどで治りますが、多発型は、治療効果が出たとしても、再発を繰り返しながら5~10年ほどは通院治療が必要です。治療中の子どもたちとご家族の心は、とてもデリケートになっています。保護者の教育や本人の心因に問題があるというような周囲からの偏見に悩むことがないよう、友達や学校の先生からの理解が必要です。薬による治療はもちろんですが、子どもの心に配慮した、温かい対応も大切な治療の一つです。



円形脱毛症と間違えやすい「抜毛癖」

単発型の症状が現れた場合、特に注意していただきたいのは、よく似た症状の「抜毛癖」を見落とすことです。「抜毛癖」とは、自分で毛髪を抜く(または毛髪の途中から切る)癖の一種です。主に9~10歳の女の子に多く見られる症状で、原因は受験時のプレッシャーや、保護者の過干渉または無関心など、一種の抑圧によるストレスから起こると考えられています。「抜毛癖」の場合は、原因となるストレスが深刻化すると、心療内科にかからなくてはいけない場合もあります。気になる症状があれば、早めに専門医を受診し、まず円形脱毛症との判別をしてもらってください。その後、専門医の指示に従って、適切な治療を行ってください。「抜毛癖」を見つけるポイントとして、子どもに髪の毛をいじる癖がないか、また抜いたあとの毛髪が机の下に大量に落ちていないかを、日頃から気を付けてください。トイレで抜くケースもよくありますので、トイレの床も要注意です。

円形脱毛症は、心の病から起こるのではなく、体質が原因の病気です。家庭でも教育の現場でも、この病気を抱えている子どもたちの心を傷つけないよう、病気の原因を思いこみで判断せず、思いやりを持って、温かく見守りながら快方へと導いてくださることを願います。


プロフィール


佐々木りか子

日本医科大学卒業。旧国立小児病院皮膚科医長、旧国立成育医療センター第二専門診療部皮膚科医長を経て、2008(平成20)年りかこ皮フ科クリニック院長。日本小児皮膚科学会事務局長。

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