受験期に花粉症で悩まない!【後編】幼児から長期的な治療プランを

花粉症は体質だから治らない……といったイメージを持たれるかたも多いと思いますが、子どものころから治療を行えば、成人したときには花粉症に悩まない生活を送ることも可能なようです。前編に引き続き、耳鼻咽喉科医師の大久保公裕先生に伺いました。



お子さまの将来をイメージして治療プランを

花粉症は、多くの人がその季節だけ気にする病気ではないでしょうか。でも、一度かかると一生続く病気です。ですから、お子さまの場合は、短期的な治療目標と長期的な治療目標の両方を持ってほしいと考えています。なぜなら、5歳のお子さまが65歳まで花粉症にかかったとしましょう。1年にたった3か月間かもしれませんが、残りの60年を毎年花粉症で悩まされると考えてみてください。人生の4分の1、15年間つらい思いをすることになるのです。

根本的に治療したいかたには、アレルゲン免疫療法をおすすめしています。原因物質(花粉症の場合は花粉の抽出液)を注射で少しずつ投与し、原因物質に対する免疫を獲得させる方法です。2年間以上続けることが必要です。たとえば、私の患者さんで小学生のころから始めて、週1回から月1回、大学病院に2年間通い、花粉症を克服したかたもいます。

2年間月1回注射を受けるのは、保護者もお子さまもつらいかもしれませんが、残りの人生は薬を飲まずに人生を楽しめるのだとしたら、いかがでしょうか。現在はこうした治療法を選べる時代になっています。ぜひ、お子さまの将来を見据え、長期的な治療を行ってほしいと思います。



花粉症の「根治」も期待できる

たとえば、私の病院では10年先、20年先のお子さまのライフスタイルをイメージしていただいたうえで、治療プランをご提案するようにしています。たとえば下記のようなプランです。お子さまがどのような部活に入って、いつ受験をして、将来どんな生活をするのかをイメージすることが大切です。

●小学生の女の子の場合
小学生のうちは点鼻薬と目薬などで乗り切り、症状が重いときは内服薬を使用。中3で受験予定のため、中学校に入学したらアレルゲン免疫療法を開始予定。中3では粘膜の様子を見て、腫(は)れそうだったらレーザー手術を行う。高校は免疫療法の経過を見て治療法を考える。

●小学生の男の子の場合
運動部に入っているため、中学生になると部活で忙しくなると予想される。小学校高学年のうちからアレルゲン免疫療法をスタート。中学校・高校は、症状を見ながら必要だったらレーザー手術を行う。
 
アレルゲン免疫療法は、保険治療が認められている治療法です。子どもの医療費が無料な自治体なら、無料で受けられます。
また、近年、新しい治療法である舌下免疫療法の研究が進んでいます。1か月に1回の通院で、毎日口からスギ花粉エキスを入れる療法です。注射の痛みもなく、頻繁な通院も必要ないため、患者さんの負担の小さい治療法として注目されています。少なくとも2年間しっかり治療するのが望ましいとされていますが、この治療を受けた8割のかたの症状がかなり改善しました。現在のところ、12歳以上の患者さんを対象に治療が行われ、今後健康保険でも受けられる見込みです。

長期的な治療プランを立てたい場合は、耳鼻咽喉科のある大学病院やアレルギー学会に入っている花粉症専門医を受診してほしいと思います。とおり一遍の治療ではなく、治療法の選択の余地や情報提供がある病院での治療をおすすめします。


プロフィール


大久保公裕

医学博士。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科教授。1988年日本医科大学大学院耳鼻咽喉科卒業後、アメリカ国立衛生研究所に留学。著書に『あなたの知らない花粉症の治し方』(暮しの手帖社)など。

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