「少人数教育の推進」またも見送りに ‐渡辺敦司‐
文部科学省が2014(平成26)年度予算で公立小・中学校の先生の数(教職員定数)を増やすことを要求していたことや、それが予算折衝で難航していたことは、これまでにも紹介してきました。2013(平成25)年末に閣議決定された政府予算案では、小学校英語の教科化やいじめ問題への対応、道徳教育、特別支援教育などについての増員は認められたのですが、7年間で35人学級化などを進める「少人数教育の推進」は認められませんでした。文科省は今後、新たな戦略の見直しを迫られることになります。
国は1959(昭和34)年以来、5~12年間の定数改善計画(外部のPDFにリンク)を策定しながら、先生の数を増やしてきました。しかし2005(平成17)年度に第7次計画が完成したあと、政権交代前の自公政権で「第8次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」案(06~10<平成18~22>年度)が幻に終わって以降は、概算要求に乗せることさえできず、やっと民主連立政権になって「新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」案(11~18<同23~30>年度)、「子どもと正面から向き合うための新たな教職員定数改善計画」案(13~17<同25~29>年度)と概算要求したものの、いずれも実現できませんでした。ただ2011(平成23)年度に小学1年生の全学級を35人以下にするための予算措置と法改正が行われたことと、12(同24)年度に同2年生でも実質的に35人以下にできる予算措置が行われたことは、大きな一歩と思われました。
政権を奪還した第2次安倍内閣として本格的な予算編成となる2014(平成26)年度に向け、文科省は「教師力・学校力向上7か年戦略」を立てました。このうち「少人数教育の推進」は、小学3年生以上でも36人以上学級を解消できる予算額は確保しながら、実際に35人以下学級にするか、増えた先生をティームティーチング(TT)や習熟度別指導などに充てるかは、市町村の裁量で選べるようにするため、7年間で1万4,700人(初年度は2,100人)を措置することを目指しましたが、予算折衝の結果ゼロ査定となってしまいました。
これには、東日本大震災の復興財源を確保するため国家公務員の給与を減額する措置がデフレ脱却・経済再生策の一環として2013(平成25)年度で終了(外部のPDFにリンク)することに伴って教員を含めた地方公務員の給与も減額分の増額が見込まれる、といった特別な事情に加え、財務省が財政制度等審議会の建議(外部のPDFにリンク)を盾に、一般公務員より優遇されている教員の給与を削減すべきだと強硬に主張してきたことに対して防戦を余儀なくされた、という背景がありました。
ただ、文科省側にも甘さがあったのかもしれません。少人数教育の効果として全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のデータ(外部のPDFにリンク)を示して定数改善の必要性を訴えたのですが、財政審には「少人数学級に取り組んだ学校の平均正答率は悪化したという結果が出ている。もはや少人数学級の政策効果がないことは明らか」と一蹴されてしまいました。
それでも学校の先生が忙しすぎるということは各方面から指摘されており、教育関係者の間では「教員数を増やさないと学校現場は持たない」というのが共通認識です。これからグローバル化対応など新たな課題やいじめ対策、道徳教育の充実などに取り組むにしても業務の効率化だけで乗り切れるのか、もっと踏み込んだ議論や検証が必要なように思えます。