子どものすこやかな足を育てる【後編】元気な足をつくる歩き方・靴選び

近年、偏平足、足指の変形など、足にトラブルを抱えた子どもたちが増えています。足のトラブルは、悪い姿勢や骨格のゆがみなどの引き金となり、注意が必要です。
前回に引き続き、スポーツ健康科学の立場から、長年、足と健康のかかわりについて研究してこられた桜美林大学の阿久根英昭教授に、正しい歩き方や、子どもの足の成長を妨げない靴選びのコツについて伺いました。



かかとから指先までよく使って歩こう!

偏平足や足指の変形を防ぐためには、とにかく足をよく使い、正しい姿勢で歩くこと。かかとから指先まで、S字を描くように着いて歩く「S字歩行」が理想的です。

<S字歩行>
かかとの外側から地面につき、小指のつけ根から親指のつけ根へと重心を移動させ、指で蹴り出す。

この歩き方をすると、膝(ひざ)の裏が伸びて歩幅も大きくなり、姿勢も良くなります。筋肉をバランスよく使うことができるため、土踏まずの発達につながり、脚もまっすぐになります。

一方、かかと重心のまま、足をひきずるように歩いていると、筋肉の一部しか使われないため、疲れやすくなります。くせのある歩き方は、骨格のゆがみの原因ともなりますので、注意が必要です。

また、正しい歩き方は、血液の循環を促進します。かかとで着地した瞬間、ふくらはぎの筋肉が伸びて細くなり、蹴りだすときには縮んで太くなります。この動きが心臓のポンプ作用に似ているため、「足は第二の心臓」と呼ばれるのです。足を動かさずにいると、血行が悪くなり、むくみの原因となります。ですから、短い距離ならなるべく車を使わず、自分の足で歩く機会を子どもから奪わないことが大切です。



正しい靴の選び方

先が細くて窮屈な靴は、外反母趾(ぼし)や浮き指など、足指の変形の原因となります。一方、子どもは成長が早いからと、やたらと横幅が広いパカパカした靴を履かせている保護者をときどき見かけますが、これも着地が不安定になり、よくありません。
靴選びで、いちばん大事なのはフィット感です。足をしっかりくるんで保護しつつ、子どもの自由な動きを妨げない靴を選びましょう。

<子どもの靴選びの条件>

・つま先にゆとりがある
足指を自然にのばせるよう、靴先がやや扇状に広がったもの、つま先に5~6ミリのゆとりのあるものを。

・かかとに安定感がある
かかとの着地が不安定だと、かかとの骨がゆがむ原因になります。かかとがぴたっとはまり、蹴りだすときにかかとが抜けない大きさのもの、靴底のかかとがやや固く、足首くらいまでの深さのあるものを。

・ソールに適度な弾力
アスファルトの強い衝撃をやわらげるため、ソールには適度な弾力性のあるものを。靴底が薄く、弾力性のない靴は、足裏や膝、腰を痛める原因となる場合があります。

・通気性&柔らかさ
子どもは大人よりよく汗をかくので、通気性のよいものを。皮膚を傷つけないように、素材は柔らかなものを選びましょう。

・靴ひもがある
足に合わせて微妙な調整ができる、ひものある靴がおすすめです。靴ひもを結んだり緩めたりすることは手先を器用にし、脳の発達にも役立ちます。



ときにははだしで外遊び!

体調が顔色に出るように、足の裏からも健康状態がわかります。健康な足は、指先にむかって開く扇のような形をしており、指も太くてしっかりしています。土踏まずがしっかり形成され、弾力があります。
ところが、最近は全体に細長い長方形で、土踏まずがなく、親指の付け根や足裏全体に脂肪がついた、弱々しい印象の足をもつ子どもが増えています。

元気な足を取り戻すためには、歩いたり、駆けまわったりするのがいちばん。決まった動きになりがちなスポーツより、さまざまな動きが体験できる外遊びがおすすめです。近くに遊び場がないなど、さまざまな問題はありますが、今の子どもたちには、勉強や習い事よりも、自然の中へ連れ出して体を動かす経験をさせることが大事なのではないでしょうか。草原や川原などでは、ときには靴を脱ぎ、はだしの気持ちよさも体験させてあげたいものです。はだしになると、子どもたちの行動も急に生き生きとしてきます。ただし、危険のないよう、目を離さず見守ることが大切です。

幼稚園への送り迎えを、車から徒歩に変えただけで、親子のコミュニケーションが増えたという報告もあります。わずか10分の通園時間の間に、子どもがよく話すようになり、道端の草花を指して「あのきれいな花はなに?」などと質問してくるようになったそうです。忙しい日々の中、子どもと歩く10分間は、親子双方にとって、心身の健康の源となったのではないでしょうか。

足の裏の面積は、片方で全体表面積の1%。両足あわせても2%です。この小さな面積で全体重を支えるため、26個の骨(片足)と複雑に走る筋肉が、上からの圧力に強いアーチ構造の土踏まずをつくり上げています。解剖学の研究家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチは、「足は人間工学上、最大の傑作であり、最高の芸術作品である」と述べています。
この「最大の傑作」を退化させず、子どもたちの元気な足を育んでゆくことが、現代の大人の義務かもしれません。


プロフィール


阿久根英昭

桜美林大学健康福祉学群教授。足の発育と運動能力、健康状態の関係に注目し、研究を行っている。『足力(あしりょく)』(スキージャーナル)など著書多数。

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