五輪の水泳チームドクターが語る 子どものスポーツ障害【後編】保護者が知っておきたい基礎知識

スイミングのスポーツ障害で関節の痛みが多いのは、スイミングが関節の大きな動きを必要とするスポーツだからです。関節を大きく動かすために柔軟性を高め、痛みを予防するための基礎知識を、前回に続き、金岡恒治先生に伺いました。



コーチの資格は更新制

障害や事故を予防するためにも、お子さんが通っているスイミングクラブの指導が適切かどうか、心配されている保護者もいらっしゃることでしょう。そのような不安に、わたしは「水泳の指導はコーチにまかせて大丈夫!」とお答えできます。
水泳指導者(コーチ)の代表的な資格のひとつに、公益財団法人日本水泳連盟が認定した「基礎水泳指導員」があります。この資格は最も初歩的な資格ですが、4年に1回の義務研修を受けなければならない更新制です。義務研修では、指導法や事故予防のノウハウなどの確認を行います。
コーチ資格には、ほかにもスイミングクラブ内で独自に行うパターンなどいろいろとあります。また、資格を持っていないコーチもいます。しかし、どのコーチもスイミングを正しく・安全に指導できるよう、教育を受けているはずです。というわけで、お子さんがスイミングクラブにいる間は、クラブとコーチを信頼し、まかせておけば良いと思います。



ストレッチで柔軟性を高めよう

ところで、スイミングのスポーツ障害では、どうして関節の痛みが多いのでしょう?
痛みの原因は、スイミングの動作をするときに、骨がこすれて炎症を起こすことにあります。そして、どんな人がこすれやすいかというと、「関節の柔軟性」が低い人となります。関節の柔軟性は個人差があり、子どもはみんな柔らかいということはありませんので硬い子は要注意です。ちなみに、オリンピック選手には関節が柔らかい選手が多く、背面で握手ができる選手がほとんどです。

柔軟性を高め、関節の痛みを予防するのに有効なのが、ストレッチです。スイミングクラブでも、プールに入る前と後に必ずやっているとは思いますが、自宅でも行いたいものです。
ただし、自己流はおすすめできません。スイミングクラブのコーチに、一度指導してもらったうえで行うのが良いと思います。体のどこが伸びているか、何回やれば良いのか、そしてこのストレッチを行う理由・目的は何か? こういったことをきちんと知ることが、効果的で安全なストレッチにつながります。



柔らかいタイプは「地上」が危ない!?

関節の柔軟性が低い人がいる反面、柔軟性が高い人もいます。このような人は、水中ではなく「地上」のケガに注意しましょう。体が水中に適応しすぎると、たとえば足首が柔らかくなり、ねんざを起こしやすくなります。ねんざは、地上・水中に関わらず痛みが長引き、けっこうやっかいです。サポーターやテーピング、トレーニングなど、ねんざの再発を予防する方法はいろいろとありますが、症状に合った予防法をとるためにも、整形外科医の診察をまずは受けましょう。
足首の関節が柔らかい人は、足首の後ろが痛くなる「三角骨障害」も気をつけましょう。これは、かかとと脛(すね)の骨がぶつかって起きるものです。つま先を伸ばした動作をしたときに痛みが続く場合は、三角骨障害かもしれません。X線撮影をすればわかりますので、やはり整形外科で診察を受けると良いでしょう。



スイミングで「土台」となる体づくりを!

スイミングの練習には、さまざまな体の動作が含まれています。また、体や関節の柔軟性と心肺機能を高めます。このように、スイミングで培った体は、ほかのスポーツをするときにも役立つ「土台」となります。ストレッチなどのちょっとした心がけで、関節の痛みは避けられますので、ぜひ楽しく安全に、スイミングを続けましょう。


プロフィール

金岡恒治

金岡恒治

早稲田大学スポーツ科学学術院教授。医学博士。筑波大学医学専門学群卒。整形外科医として臨床に従事後、2012(平成24)年より現職。シドニー五輪から水泳競技チームドクター、ロンドン五輪ではJOC本部ドクターを務める。日本水泳連盟医事委員長。

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