子どもがうつかもしれないと思ったら【前編】~子どものうつ病の特徴と受診の目安~

近年、うつ病の患者が増えています。厚生労働省の調査によると、1996(平成8)年には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、2008(平成20)年には104.1万人と9年間で2.4倍に増加しました。児童精神科医の猪子香代先生によると、その傾向は子どもも同じだと言います。1回目の今回は、子どものうつ病の特徴と病院受診の目安についてお聞きしました。



子どものうつ病の特徴

毎日生活をしていると、誰でも落ち込んだり、憂うつになったりすることがありますよね。たとえば、自分は悪くないのに学校の先生に怒られたという場合。先生だから反抗することもできず、憂うつな気分になります。ただ、仲間に愚痴を聞いてもらったり、たっぷり睡眠をとっておいしいものを食べたりすれば、また以前のように元気になるものです。ところが、憂うつな気分が続き、いつまでたってもふさぎ込んだままで、何事に対してもやる気がなくなることがあります。これが「うつ病」の典型的な症状です。大人がうつ病になると一般的には「悲しい」「暗い」「つらい」と感じることが多いですが、子どもは「悲しい」というよりも「イライラ」と感じることが少なくありません。下記に子どものうつ病によくみられる症状をまとめました。


子どものうつ病によくみられる症状

●うつ病の行動に現れる症状
落ち着きなく動き回る、何をするのも遅くなる、話さなくなる、やらなければならないこともできない、面倒くさがる、集中できない、次の行動を考えることができない

●うつ病の身体的な症状
食欲がない、体重が減った、食べ過ぎてしまう、体重が増えた、眠れない、いつまでも眠っている


上記以外にも、何をやっても楽しいと思えないことがつらいため、少しでも楽しい気分になりたいと派手な服装をしたり、夜遅く遊びに行ってしまったりすることもあります。これは、失われつつある自分のエネルギーを保とうとするための行動です。上記のような子どもの様子を見て、まわりの大人たちはうつ病とは思えず、「思春期にはよくあることだ」「性格が変わったのかもしれない」と考えてしまうこともあります。ただ、そんな子どもたちの中には、つらい気持ちを抱えている子が少なくありません。



病院受診の目安

イライラする、話さなくなるといった症状だけでは、うつ病かどうかの判断は難しいでしょう。特に、思春期の子どもの場合は迷うことも多いと思います。一つの目安として考えてほしいのは、学校に行くことがつらくなる、仲の良い友達とも付き合いたくないなど、今までは楽しくやれていたことが苦しいと感じているとき。そして、朝起きられない、夜眠れない日が続くなど生活に支障を来しているときです。これらの行動が2週間以上続いているときは、うつ病のサインであることが多いので、医療機関の助けを借りると良いでしょう。

なかでも、早めに医療機関の受診をしてほしいのが、子どもが「死んだらどうなるのかな」「どんなことをすると死ぬのかな」などと死に関係することを考えているときです。そんなに大人が心配するようなことではないと思っても、子どもはどんな行動が致死的なのかという判断が十分ではありませんから、つらい気持ちを紛らわせようと思っただけの行為が、死につながってしまうことがあります。ですから、自傷行為を予感させる言葉ではなくても、「自分はだめなんだ」「自分は悪い子なんだ」「もうどうしようもない」ということを子どもが口にするようでしたら、医療機関に相談することをおすすめします。

うつ病の子どもは年々増えており、誰にでもなる可能性がある病気です。子どもの心が弱いわけでも、保護者の育て方が良くなかったわけでもありません。子どもや自分を責めるのではなく、まず医療機関に相談してほしいと思います。うつ病を疑って受診すると、発達障害だったというケースもあります。うつ病も発達障害も、治療によって改善することが多く、早めに受診することが子どもを救うことになります。児童精神科に行くのを迷われるときや適切な医療機関がわからないときは、学校のスクールカウンセラー、または地域の精神保健福祉センターや保健所で相談をしてみると良いでしょう。


次回は家庭でできる予防策についてお伺いします。

プロフィール


猪子香代

横浜市の児童精神科・猪子メンタルクリニック院長。東京女子医科大学非常勤講師。東京女子医科大学卒業後、東京女子医科大学病院小児科、名古屋大学病院精神科などで長く児童精神科の臨床を経験し、2011年に猪子メンタルクリニックを開設。著書に『子どものうつ病』(慶應義塾大学出版会)、『子どものうつ病ってなあに?』(南々社)がある。

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