学校案内は、本当にわかりにくいのか[中学受験]

受験生の保護者から、学校案内はわかりにくいという話を聞くことが多い。学校案内は、志望校選定で最も重要なものなので、受験生・保護者には、学校のことを良く理解してもらうための解説書というべきもので、わかりにくいのでは意味がない。

実態はどうなのか、アンケートで調査した。<表>は、受験生の保護者と学校に対し、学校案内についてのアンケート結果をまとめたものだ。「保護者」の行は保護者が実際に「はい」と回答した割合で、「学校」の行はこれぐらいの受験生・保護者が「はい」と回答するだろうと学校が予想した割合(平均)である。

設問(1)の「学校案内は、教育方針・校風が受験生本人にも理解できますか?」は、「受験生本人にも」という点で、「はい」の回答が37%と低くなったのだと思う。当の受験生本人は小学生とはいえ、あれほど難しい国語の入試問題で鍛えているのに、学校案内の理解までは力が及ばないようだ。また、受験生本人が第1志望校を選ぶ割合が70%を超える現状を考えると、学校に対しては、受験生でも教育方針・校風くらいは十分にわかる学校案内にしてほしいと思う。

設問(2)は、3つの中では最も割合が高かったが、それでも、保護者と学校の回答は50%に満たない。

設問(3)の「御校の学校案内を見れば『我が子に合う学校』かどうかがわかりますか?」に至っては、「はい」と回答した保護者の割合が、わずか16%であったことは残念としか言いようがない。また、御校の学校案内を見れば「我が子に合う学校」かどうかがわかると回答した保護者は何%と予想されるかという質問で、学校の予想は45%であった。学校案内を理解している受験生・保護者は、学校の予想よりも30%近く下回り、大きなギャップがあることがわかる。

全体として、学校は、受験生・保護者が学校案内の重要な事項を理解していると予想した割合の平均が50%にも満たないことを自覚していながら放置していることになるが、もう少しわかりやすい学校案内を作成する努力をすべきだと思う。学校にとっても、わかりやすい学校案内は、受験生・保護者からも支持されるはずで、データを分析してみると、受験生・保護者が自校の学校案内を理解していると予想した割合が高い学校ほど、受験者数が増えていることがわかった。一方で、保護者はもう少し学校案内を理解する工夫が必要だと思う。
 
学校案内は本当にわかりにくいのか、という疑問がある。学校案内の読み方を変えれば、もう少しわかりやすくなるのではないか。どのようなことでも、優劣は比較しなければ、正確に理解することはできない。第1志望校の学校案内だけを熟読するのではなく、複数の志望校の学校案内を並べ、どのような違いがあるかを比べながら読むのである。学校案内には、比べて理解することができるという、ほかにはないメリットがある。学校案内は並べて見ることができるが、説明会や文化祭までとなると手に余るのではなかろうか。まずは学校案内で一定の学校の見極めをしておきたい。



【学校案内に関するアンケートの集計結果】


設問(1):学校案内は、教育方針・校風が受験生本人にも理解できますか?
設問(2):学校案内は、入学後をイメージできる内容になっていますか?
設問(3):御校の学校案内を見れば「我が子に合う学校」かどうかがわかりますか?


  設問(1) 設問(2) 設問(3)
保護者 37% 42% 16%
学 校 46% 48% 45%
保護者 - 学校 -9% -6% -29%

注)「保護者」は「はい」と回答した保護者の数を全体の保護者で割った割合。「学校」は、各学校が自校の学校案内について「はい」と回答すると予想した保護者の平均値


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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