「主幹教諭」はつらいよ!? 希望降任者が増加

校長などの管理職ポストから、自ら望んで一般教員ポストなどへ異動した「希望降任者」の数が2009(平成21)年度に過去最高を記録したことが、文部科学省の調査でわかりました。中でも希望降任者数が最も多かったのが、中間管理職に相当する「主幹教諭」です。民間企業でも中間管理職はつらい立場にある場合が少なくありませんが、学校の場合、さらに難しい事情があるようです。
主幹教諭とは、改正学校教育法により2008(平成20)年度から制度化された職で、校長や教頭など管理職の命令を受けて、校務を行う教員のことです。一般的には教務主任などの主任を兼務していますが、従来の主任が校長から任命される校務担当者の一人に過ぎなかったのに対して、主幹教諭は、都道府県教育委員会などによる選考試験に合格した者が任命され、給与なども一般教員より高く設定されています。

「主幹教諭」はつらいよ!? 希望降任者が増加


09(平成21)年度に管理職の希望降任制度を設けているのは、都道府県教委と政令指定都市教委のうち、名古屋市を除く64教委。希望降任者は前年度より44人増の223人で、過去最高となりました。223人の内訳を見ると、校長が9人(前年度より5人増)、副校長・教頭が90人(同6人増)、主幹教諭が121人(同32人増)、教委の指導主事など「その他」が3人(同1人増)となっており、いずれも増加しています。
以前から教頭(副校長)が激務だと言われていたのですが、最近では、主幹教諭の希望降任の増加も問題となりつつあります。主幹教諭から一般教諭に希望降任した者の数は、06(平成18)年度12人、07(同19)年度27人、08(同20)年度89人、09(同21)年度121人。主幹教諭が法制化され、全国的に導入された08(平成20)年度以降に、急増していることがうかがえます。今後、主幹教諭の発令者数が増えるにつれて、希望降任も増加することが予想されます。

では、なぜ主幹教員の希望降任者が多いのでしょうか。そもそも主幹教諭のねらいは、学校に中間管理職を導入することにより、民間のようなピラミッド型組織にして、より効率的な学校運営ができるようにすることです。しかし、校長と教頭など少数の管理職以外はみんな平等という従来の「鍋ぶた型」の学校組織に慣れた教員の間には、中間管理職である主幹教諭に根強い反発があると言われています。
さらに、主幹教諭は別の学校に転勤しても、引き続き主幹教諭として教務主任などのポストに就くことになりますが、学校ごとに地域や子どもの実態、仕事の進め方などが異なり、着任早々の主幹教員がすぐに主任を務めるのは難しいのが実情のようです。このため、中間管理職としての激務と、周囲の教員との摩擦に疲れて、希望降任する者も多いと見られます。

中間管理職の受難は、民間企業でも同様でしょう。ただ、公立学校の場合は、鍋ぶた型組織が良いのかそれともピラミッド型組織が良いのかという、学校組織の在り方そのものに関する考え方の対立が、背景にあるのです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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