やはり「教頭はつらいよ」 増える希望降任者

学校の中で、一番きつくてつらいポストというと、何でしょうか。おそらく学校関係者の多くが、「教頭・副校長」を挙げるはずです。文部科学省の調査結果でも、健康上の理由などで教頭から一般の教諭に自ら望んで戻る者が、年々増えています。校長の補佐役として学校の実務を切り盛りする一方で、一般教員からは何かと突き上げられる……。まさに「教頭はつらいよ」というところでしょうか。

やはり「教頭はつらいよ」 増える希望降任者


調査によると、全国の都道府県と政令指定都市のうち、自ら希望して下のポストに降りる「希望降任制度」を設けているのは、65教育委員会に上ります。このうち、2010(平成22)年度に希望降任した公立学校の管理職・準管理職は、計211人(前年度比12人減)でした。内訳を見ると、校長が8人(同1人減)、教頭・副校長が93人(同3人増)、主幹教諭が103人(同18人減)、その他が7人(同4人増)となっています。
希望降任者が最も多いのは、主幹教諭です。そのポストの説明や、なぜ希望降任者が多いのかは、当コーナーでも以前にお伝えしました。しかし、主幹教諭の導入が進み、制度的には定着しつつあるようで、今回の調査では、希望降任者の数が初めて減少しました。
一方、教頭(副校長を含む。以下同じ)の希望降任者の推移を見ると、2004(平成16)年度が71人、05(同17)年度が60人、06(同18)年度が62人、07(同19)年度が69人、08(同20)年度が84人、09(同21)年度が90人、10(同22)年度が93人と、年々増加を続けています。

教頭は、校長を補佐して、実質的に学校運営の実務全体を切り盛りしています。文科省の勤務実態調査によると、平日(10月期)1日当たりの平均残業時間は、中学校の場合で、校長が1.48時間、教諭が2.09時間であるのに対して、教頭は3.04時間と群を抜いています。朝は一番早く学校に来て警報機を解除し、夜は最後まで残り警報機をセットして帰る……というのが、教頭の日常といってよいでしょう。
さらに教頭の仕事を厳しくしているのが、仕事の多様さと精神的負担です。ある教頭は「クレーム対応から校庭の草むしりまで、学校の何でも屋です」と、教頭の仕事を説明しています。また、一般の教員がやりたがらない仕事が回ってくる場合も少なくないようで、精神的にも苦しいといいます。

このため、激務を敬遠して、教頭になろうという教員が減少していることが全国的に大きな問題となっています。たとえば東京都では、今年の教頭選考試験の倍率が1.1倍まで落ち込みました。このままでは優秀な教員が管理職を希望しなくなる、と多くの教委関係者が懸念しています。
1校に2人の教頭を置く「複数教頭制」を導入するなど、教頭の業務軽減に乗り出す教委もありますが、対応は十分とはいえないのが実情です。保護者の方々も、学校に行った際には、教頭先生にねぎらいの言葉をかけてあげてはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A