先生にも「中間管理職」、学校は変わるか!?

小学校から高校までの学校に、早ければ2008(平成20)年度から「主幹」という中間管理職が教員に加わる見通しとなりました。教育関係者の間では、これによって学校は大きく変わるのではないかと言われています。

学校教育法によると、一般の教員には、助教諭、教諭、教頭、校長の4種類がありますが、助教諭は非常に数が少ないので、実質的には教諭、教頭、校長の3種類といってよいでしょう。このうち校長と教頭が管理職で、あとの教諭は身分上同格です。つまり、勤続年数などによって給与の額に違いはあるものの、新卒1年目の新米教員も、教務主任を務めるベテラン教員も、すべて教諭として身分上は対等であるというのが、これまでの教員組織の大きな特徴でした。ちなみに、学校には教務主任や学年主任などの「主任」がいますが、これは校務分掌(校内での業務)上の役割であり、職種ではありません。

しかし、これでは校長、教頭にだけ責任が集中し、組織が効率的に機能しないと従来から批判されていました。そこで、安倍晋三首相が設置した教育再生会議は、今年1月の第1次報告のなかで、民間企業や行政職公務員などと同様に教員にも中間管理職制度を導入するよう提言しました。それが「主幹」です。

「主幹」制度は既に東京都が2003(平成15)年度から導入しているなど、全国的にも導入する都道府県が増えています。教育再生会議の報告は、これをきちんと法制化して全国すべての学校に適用し、校長-教頭-主幹-教諭というピラミッド型組織にして、効率的な組織マネジメントができるようにするよう提言しています。中間管理職となる「主幹」は、都道府県教育委員会の選考試験によって選ばれ、一般の教諭よりも高い給与が支払われることになります。

ただ、教員は教育の専門家であり、全員が管理職を目指すとは限りません。このため、教育再生会議や文部科学省の中央教育審議会では、優れた指導力をもつ教員のために「スーパーティーチャー」や「指導教諭」などというポストを創設し、中間管理職並みの給与を出すことを検討しています。いわば、中堅以上の優秀な教員は、管理職候補となる中間管理職の「主幹」と、授業や若手の指導などに専門性を発揮する「指導教諭」の二つにキャリアが複線化されることになります。この教員改革によって、硬直的で効率が悪いとされる現在の教員組織の在り方が大きく変わることが期待されています。

ただし、仕事の特殊性から、民間企業のようなピラミッド型組織は教員には合わないと批判する意見も教育関係者の間にはあります。教員の仕事は、互いに助け合い、教え合うことで成り立っており、中間管理職などを導入して権限や給与に差をつけると、教員の協働性、同僚性を損ね、逆に学校の教育活動全体の質を低下させるという意見です。

安倍首相は、今の通常国会に「主幹」の法制化などのための学校教育法改正案を提出することを表明しています。中間管理職創設などの改革が、教員組織を活性化させることになるのか、それとも教員間の対立を招き学校教育の質を低下させることになるのか。その行方が、注目されるところです。

東京都の「主幹」制度

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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