ひどい言葉も、親なら許される?[教えて!親野先生]

【質問】

 

親野先生の本を読んで、親が否定的な言葉をシャワーのように浴びせ続けることがどれくらい子どもにとってマイナスか気が付くことができました。それで、気を付けるようにしているのですが、もとに戻ってしまってひどい言葉を言ってしまうことがあります。友達に言ったら「いいんじゃないの。だって、親でしょ。親なんだからいいのよ。愛情さえあればね。他人の子じゃないんだから」でおしまいでした。親野先生、私を叱咤(しった)激励してください。(浮雲漂流 さん:小学3年生女子)


ひどい言葉も、親なら許される?[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

浮雲漂流さん、拝読いたしました。

他人の子にはとても言えないような言葉や、大人同士では絶対に言えないようなことも、我が子なら平気で言えてしまう。我が子には、日頃から感情的で否定的な言葉を使うのが当たり前になっている。ときには、人格を否定する言葉すらぶつけてしまう。
残念ながらこのような親が非常にたくさんいます。というより、ほとんどの親が程度の差こそあれこれに当てはまります。なぜなのでしょう?

はっきり言えば、それは親が親であることに甘え、親という立場に甘えているのです。親だから許されると思っているのです。
「だって、親子だよ。何の遠慮がいるの?」
「私は親だよ。自分の子どもに何の遠慮がいるの?」
そう思っているのです。
特にお母さんたちは、子どもが自分のお腹から生まれてきたので、自分の一部だと感じているところがあるようです。本人も気が付かないうちに、無意識のうちにそう感じているようです。
自分の一部に何の遠慮がいるでしょう? 遠慮なんかいるはずがありません。だから、ひどい言葉も平気で言えてしまうのです。
でも、ここに親と子の意識の大きなズレがあるのです。子どものほうは、決して「自分は親の一部だ。自分はお母さんの一部だ」などと思ってはいません。

これをお読みの皆さんは、子どものころどうでしたか? 「自分は親の一部だ。自分はお母さんの一部だ」などと思っていた人がいるでしょうか?
いるはずがありません。「自分は一人の人間だ」と思っていたはずです。
実際そうなのです。子どもは一人の人間なのです。親に人格があるように子どもにも人格があるのです。

確かに、親である皆さんをとおしてこの世に生まれてきました。そして、皆さんに育ててもらっています。
でも、この世の中に一人の人間として皆さんとまったく同じ存在価値を持って存在しているのです。その存在価値において、一人の人間としての絶対的価値において、その比類なき価値において、皆さんとまったく対等なのです。
親も一人の人間であり、子どもも一人の人間なのです。人間同士なのです。ただ、皆さんより、ほんの2、30年遅く生まれてきただけです。

「子どもは天からの授かりもの」という言葉があります。でも、それは間違いです。「子どもは天からの預かりもの」なのです。もらったのではなく、預かっているのです。
大切な一人の人間を、皆さんが預かっているのです。人間をですよ!
このうえなく大切な絶対的価値を持っている一人の人間を、皆さんが預かっているのです。何と恐れ多いことでしょう。あだやおろそかに扱えるはずがありません。

世の中では、親子関係を巡る悲惨な事件がたくさん起きています。子どもが親を殴ったとか、あるいはもっとひどいことをしてしまったとか……。
事件にならないまでも、親子で憎み合っている例は私たちの身近にもけっこうあります。親子でありながら、他人以上に冷え切った関係というものは至る所にあります。

親子ですよ。親子だったら最高に良い人間関係になれたはずですよね?
でも、そうなれなかった。その原因はどこにあるのでしょう? もともと無力な子どもが、その原因の第一歩を作るなどということはありえないことです。それはやはり親にあるのです。親の、立場に甘えた言葉や行いにその原因があるのです。

親子といえども人間同士です。親子関係も人間関係の一つであることに変わりはないのです。そして、良い人間関係というものは、お互いが相手の立場に立って思いやりを持って接するとき初めてできるものなのです。
今子どもはどういう気持ちなのか、こういうことを言われたら自分だったらどう感じるだろう、この子にこれができるのだろうか、無理な要求なんじゃないだろうか……。このように子どもの立場で考えてあげることです。
そして、できないことは許してあげたり、できるように手伝ってあげたり、優しい言葉を掛けてあげたりする……。こういうことが大切なのです。
そうすれば、子どもは自然に親を尊敬するようになります。親子関係も自然に良くなります。そして、子どもは明るく元気で素直で優しくなります。
皆さんにとって、我が子との関係こそ一番大事にしたい関係のはずです。もしそうなら、言葉を大事にしてください。言葉こそが人間関係を作るのですから。

子どもは親の言葉を真似するという点も重大です。親の言葉がひどいと、子どもも友達にひどい言葉を使うようになるのです。友達に対して、「なんでお前は○○なの? ○○できないの? ○○しなきゃダメだよ。○○しなきゃ遊んでやらないよ」などと言うようになるのです。
子どもが自分に自信を持てるようにしてあげるためにも、言葉を大切にしてください。子どもにとって親の言葉は最大の環境です。
親に否定的な言い方をされていると、子どもは自分に自信を持てなくなります。
親に肯定的な言い方をされていれば、子どもは自分に自信が持てるようになります。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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