今井絵理子さん(歌手)が語る、家族が笑いで包まれる子育て【第1回】 笑顔を絶やさない秘訣
1996年、沖縄から彗星(すいせい)のごとく現れ、圧倒的なパフォーマンスで一躍トップスターとなった人気グループ "SPEED"。そのメインボーカルとして12歳でデビューした今井絵理子さんは、SPEEDの活動と並行してソロとして活躍され、20歳で結婚。一粒種の礼夢(らいむ)くんを出産されました。
現在9歳になる礼夢くんは、先天性聴覚障がいがある小学3年生。幼いころから天使のような笑顔を見せる彼は、ゆっくりと歩みを進めながら、人を笑わせるのが大好きな少年に成長しています。シングルマザーでもある今井さんに、子育ての中で笑顔を絶やさない秘訣(ひけつ)を伺いました。
「笑顔でいこう!」がポリシー
礼夢は、現在ろう学校の小学3年生です。ろう学校といっても一般の小学校と同じ教科書を使って学びますので、だんだん学校の勉強も難しくなってきて、宿題も増えてきました。お友達が大好きで、特に女の子には「紳士」ぶりを発揮しています。
私にとっては、障がいがあろうがなかろうが、子育ての何もかもが「初めて」です。不自由はあってもそれは彼の個性の一つと思って暮らしています。礼夢は、「ママはいつも笑っているから好き!」と言います。私も彼の笑顔が大好きです。
彼が生まれ、障がいがあることを知った時、「どんな時も、共に笑顔でいこう!」と自分に誓いました。あの時の自分の強い気持ちを忘れたくないのと、礼夢の「笑っているママが好き」という言葉が、私をいつも笑顔にしてくれる気がします。そのおかげか、礼夢はお笑いが大好きでユーモアセンスも抜群です。最近では、流行語大賞にもなった「お・も・て・な・し」のポーズにハマって、いつも家族を笑わせてくれます。
もちろん、叱る時もあります。父親役を果たさなければならない時は厳しくすることもあります。その時は「感情」で怒らないように気を付けています。私を選んで生まれてきてくれた奇跡を思うと、ありがたくて怒ってなんていられないです。私の子育ての根っこには常に、「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちがあります。「生きていてくれて感謝」という気持ちが、笑顔のもとかもしれません。
焦らず・比べず・あきらめず
だいたいイライラする時って、大人(自分)の都合を優先して、子どもをそれに合わせようとしている時ですよね(笑)。子どもには子どもの、それぞれの歩幅やペースがあって、大人都合で進めるのは違うなと、思っています。加えて、礼夢の成長に関しては、育児書には当てはまらないことばかりです。ゆっくりとした歩みでも、うまくいくことも失敗しちゃうことも、全部が礼夢にとっては大きな経験で成長の糧なんだ、と気付いたら、感情で怒ることが本当になくなって、どんなことも喜びや笑いに変わるようになりました。
子どもは子どもの世界の中で、一つひとつできることが増えていくことを実感しています。今できないからといって決して焦らず、誰かと比べたりせず、簡単に諦めない、「焦らず・比べず・あきらめず」の精神で、一歩一歩笑顔で進んでいきたいと思っています。ただし「比べず」には注意が必要で、成長に必要な競争心は消したくありません。子どもの中にある、眠っている力、隠れている力を引き出すのは、親の役割だと思うんです。礼夢は負けず嫌いなので、よい方向に力を発揮できるようサポートしたいです。
テーマは自立
今、彼は部活動のドッジボールに夢中で、試合などもあり、親子で燃えています。プールも好きで、スイミングスクールにも週1回通っています。三半規管があまり強くないので、バランス感覚など危ないところもあります。でも身体を動かすことが好きで、痛い思いをしながらも、自分で注意し対処できるようになってきました。
聴覚に障がいがあり、聞こえないことでキャッチできる情報が少ないというハンディがありますが、その分、経験するすべてのことから、考え、想像する力を養えるよう、見守っています。礼夢が自分で考え、一人でも行動していけるようになってほしい……。彼の自立は私にとってすごく大きなテーマです。
次回は、今井さんを育んだふるさと沖縄やご両親のこと、そして礼夢くんとふるさとの関わりについて伺います。
『おやこ劇場』 <祥伝社/今井絵理子(著)/1,365=税込み> |