へこたれない子になって欲しい。「困難を乗り越えられる力」を育むための、学習面での保護者の声かけ方とは
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小学生の子どもの、困難を乗り越える力(レジリエンス)の育て方には保護者の関わりが重要だといいます。特に、学習でつまずきやすく心も不安定になる思春期に入った小学校高学年こそ、影響力の大きい保護者が学習面でどんな関わり方をするかはとても重要です。
後編では、具体的な保護者の関わり方について、長年この年齢の子どもたちの学習を見てこられた中学受験塾「アテナ進学ゼミ」主宰の宮本毅先生に伺いました。
過干渉に気を付けて、子どもと適度な距離感を保つこと
高学年の子どものレジリエンスを育てるうえで、まず保護者が意識したいのは、子どもと適度な距離を保つことです。この時期の子どもが保護者からの管理や口出しを嫌うのは、自立に向かっている成長の表れでもあります。ですから、子どもを手助けしすぎず、過干渉にならないようにすることが大切です。干渉というのは、「〜しなさい」といった言い方で命令や指示をすることです。人は誰しも命令や指示をされると反発を覚えるものですから、こうした干渉をなるべくなくして、ある程度子どもに任せましょう。また、その時はあらかじめ親子で話し合い、大枠のルールを決めたうえで子どもに任せることをオススメします。
勉強時間をあらかじめ決めておき、その間は他の家族も協力して応援を
たとえば勉強時間であれば、「何時から何時まで勉強」などと決めておくのです。そして、その時間が近付いたら「お、勉強の時間だ」と声をかけて、他の家族も読書など似たような過ごし方をして協力するようにします。すると、《自分だけががんばらなければならない》と孤独を感じずに、取り組みやすくなります。
こうして、干渉せずに少し距離を置いて見守ることが、子どもの気づきを促し、自立をサポートすることにもつながります。
子どもへの声かけから《マイナスの言葉》をなくし、すべて《前向きな声かけ》に
子どもと適度な距離感を保つことは大切ですが、同時に、見守りながらも適切な声かけは必要といえます。そして、それは《前向きな声かけ》であることが重要なのです。
《前向きな声かけ》とは、子どものできていないことや短所を指摘するのではなく、今できていることに目をむけて、そこを認めた声かけのこと。ですから、子どもへの声かけからマイナスの言葉はできる限りなくして、すべて《前向き》なものにしてみてください。
テスト結果の《良かったところ》に着目。そこを認めた《前向きな声かけ》がレジリエンスを育てる
たとえば、テストが返却されて四教科中で国語だけが良かったとすると、国語以外のできなかった教科について話したくなるものです。でも、そこをあえて国語に目を向けて「あなた国語よくできるんだね。前回漢字が4割だったのが今回8割もできているじゃない」といった声かけです。そして、「他の教科もやったらできるんじゃない?」といった提案をすると、子どもも「他の教科もやってみようかな……」と思ったりします。
こうして、保護者が子どもの良かったところを探して《前向きな声かけ》をすると、自ずと子どもも前向きになっていきます。こうした前向きな声かけの積み重ねが、子どもの「次、がんばるぞ!」という意欲や粘り強さにつながり、レジリエンスを育てることになるのです。
求められるのは、粘り強く、子どもの育ちを長期的に見るおおらかさ
いずれにしても、子どものレジリエンスは短期間で身に付く力ではありません。そこには、保護者が子どもの育ちを長期的に見る《おおらかさ》が必要です。目の前の子どもが物事がうまくいかずに投げ出しかけていても、前向きな声かけをしていくことは、ある意味で保護者の胆力が試されることでもあります。
たとえば、中学受験をするご家庭で、子どもが理解できずに勉強でつまずいていても、「今はできなくてもいいんじゃない?」と保護者が考えてあげられるかどうか。子どもには理解できるタイミングというものがありますから、もしかするとそれが受験期に間に合わない場合もあります。
《受験》で考えると、「それは困る!」と思うかもしれませんが、子どもの人生を考えたら、何も中学受験が全てではありません。
私の教え子にも、中学受験でパッとしなかった子が、6年後に難関大学に合格したと報告しに来てくれる例は数え切れないほどあります。ですから、子どもの将来的な可能性を信じて、育ちを長期的に見るおおらかさが必要です。
日常に実践していくことは難しいことですが、保護者が粘り強く前向きな声かけを積み重ね、子どもの育ちを長期的に見るおおらかさがあれば、子どものレジリエンスは着実に育まれていきます。
まとめ & 実践 TIPS
高学年の子どものレジリエンスを育てるために保護者に求められるサポートは、子どもと《適度な距離感》を保ち、見守ること。同時に、子どものできていないことや短所を指摘するのではなく、今できていることに目を向けて認める《前向きな声かけ》が子どもの意欲や粘り強さにつながり、レジリエンスを育てることにもなります。
また、保護者が粘り強く前向きな声かけを積み重ねて、子どもの育ちを長期的に見る視点を持つことで、子どものレジリエンスが着実に育つことを教えていただきました。心に留めて子どもに接していきたいですね。
取材・文/小澤和子
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