乳幼児期から育む、折れない心【前編】困難に負けない、レジリエンスとは

人生は山あり谷あり、さまざまな逆境や困難に直面します。それらを乗り越えたり立ち直ったりする力のことを「レジリエンス」と言います。これからの時代、ますます重要になるといわれるレジリエンスについて、子どものカウンセリングにも従事する埼玉学園大学の小玉正博教授に解説していただきました。



不測の事態にしなやかに対応できる力を

もともと心理学の用語であるレジリエンスが注目されたきっかけの一つは、東日本大震災です。被災地の方々は、計り知れない困難から立ち上がり、人生を歩まれています。これこそ、レジリエンスを体現した例といえます。

レジリエンスが注目される背景には、先が見通しづらい時代になったこともあります。今や誰もが知る大企業ですら安泰とはいえない社会状況です。がんばって念願の会社に入れたとしても、必ずしもよい人生につながるとは限りません。こうした変化の激しい時代には不測の事態にもしなやかに対応する力、すなわちレジリエンスが求められるのです。

誤解されやすいのですが、レジリエンスは人生で挫折しないようにうまく立ち回るすべのことではありません。むしろ挫折の経験を前提と考えています。挫折によるダメージから本来の自分を取り戻したり、失敗を肥やしとして成長のきっかけにしたりすることが、レジリエンスの基本的な考え方です。



レジリエンスにはいろいろな力や姿勢が含まれる

レジリエンスが高い・低いというのは、生まれもっての資質による影響もありますが、考え方や行動によって高めることができます。そのカギとなるのは次のような要素です。

●気持ちや感情をコントロールする力
困難に直面した時ほど、パニックを起こさず、冷静な対応が求められます。そのためには、自分の気持ちや感情をコントロールする力が不可欠です。

●変化する状況に順応できる柔軟性
自分が考えたとおりにならなくても、絶望したりあきらめたりせず、状況は常に変化するという事実を受け入れ、積極的に順応することが求められます。

●自分は大切だという感覚
「自分は生きている価値のある人間だ」「ここにいていい人間なんだ」という自尊感情があることで、逆境から抜け出せる心の強さが保てます。

●必要な時に助けを求められる力
一人ですべてを背負い込まず、逆に誰かに丸投げしようとせず、必要な時は助けを求める力が大切です。

●自分を犠牲にしない
しばしば子どもがけなげにがまんしている様子は美談とされますが、年齢不相応ながまんをすることは、心を折れやすくします。自分を大切にして、身の丈に合った振る舞いをすることが大事です。

●楽観的であること
人には、できることとできないことがあります。いつまでもできないことについて悩んでいても仕方ありません。自分のできることに目を向けて、先に進むように考えましょう。

●嫌なことを割り切る力
楽観と似ていますが、嫌なことがあっても、「それはそれ」と割り切り、いつまでもネガティブな気持ちを引きずらないことが大切です。



子どもの遊びは、レジリエンスの土台を築く絶好の機会

幼児期から発達段階に応じた課題をしっかり達成していくことは、レジリエンスの土台を築くためにも大切なこととなります。まず、乳幼児期には、最も大切な他者、多くの場合は母親との間にしっかりとした愛着関係をつくることが重要となりますが、それによって「自分はここにいてもいいんだ」という確かな自己肯定感が育まれます。そうした自分を大切に思う心は、さきほどお話ししたように、逆境を乗り越える心の強さに通じていきます。

幼児期から児童期にかけては、「遊び」を通じて、外の世界に関心を持ち、自分の力を試し、そして自分は何かができると実感することが大切な時期ですが、遊びで失敗と成功を繰り返す経験もレジリエンスの土台となります。「自分はできる」といった自己効力感、また自らチャレンジしようとする自発性が育ち、レジリエンスに不可欠な自立へとつながっていくのです。

ですから、遊ぶ際には、子ども自身が「面白い」「楽しい」と感じていることが大事です。保護者から指示されるのではなく、自らの興味や関心によって遊ぶからこそ、飽きることなく試行錯誤と反復を続けられのです。大人から見ると、同じことを飽きもせずに繰り返すなど、むだに思えることが多いかもしれません。しかし、いろいろな工夫をしながら、変化や反応を確かめたり楽しんだりして、自分と外界との関係を学んでいるのです。

ただ、現代の日本では子どもが自由に遊べる空間が減っています。そのため、子どもが自由に遊びを創り出すのではなく、お膳立てされた遊びに乗っかるような状況が増えています。そうした社会環境の中で、子どもが徹底的に遊び切ることができる場を与えるのは、我々大人の課題といえるでしょう。

レジリエンスの土台は、幼少期の保護者の関わりによって育まれることがわかります。後編では、レジリエンスを伸ばすために具体的な働きかけについて、小玉先生に伺います。

『ヘコんでも折れない レジリエンス思考: 復元力に富む「しなやかな心」のつくり方』『ヘコんでも折れない レジリエンス思考: 復元力に富む「しなやかな心」のつくり方』
<河出書房新社/小玉 正博 (著)/1,404円=税込み>

プロフィール

小玉正博

小玉正博

埼玉学園大学大学院心理学研究科長。臨床心理士。医学博士。筑波大学を経て現職。大学の臨床心理カウンセリングセンターで臨床心理士として、子どもから大人までの悩みや問題解決に当たっている。著書に『ヘコんでも折れない レジリエンス思考』(河出書房新社)など。

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