なくなるかも?時間割の「A週」「B週」

今の小・中学校の時間割が必ずしも毎週同じでないことは、以前このコーナー(「学力向上で『実技系教科』はどうなる」)でも紹介しました。多くの学校では週によって「A週」「B週」と時間割を替えたり、学期ごとに新しくしたりと、さまざまな工夫をしているのが現状です。
しかし2011(平成23)年度以降は、そうした苦労をしなくても済むようになるかもしれません。学習指導要領の改訂を論議している中央教育審議会が、各教科の年間授業時間数を「原則として35の倍数」にする方向で検討を進めているからです。

改めて説明しますと、夏休みや冬休みを除いた学校の授業日は、だいたい年間35週分になります。
つまり、毎週1時間授業を行えば年間35時間、2時間行えば70時間、3時間行えば105時間……というわけです。この「35」という一見中途半端な数字は、実は先生たちの間では昔から非常になじみの深いものなのです。

しかし、今の指導要領のさらに前の指導要領では、小学校〈1992(平成4)年度から実施〉で一部に「68時間」「102時間」など、35の倍数から微妙にずれた時間の教科が出てきました。
それが今の指導要領〈小・中学校とも2002(平成14)年度から実施〉になると、「45時間」「60時間」「80時間」「90時間」など、学年によって35で割り切れない教科が珍しくなくなりました。
これでは、年間35週を前提とした毎週同じ時間割は組めないわけです。

中途半端な授業時数が増えた一番の大きな理由は、2002(平成14)年度からの学校週5日制の導入で、授業時数を減らさなければならなくなったからです。特定の教科だけまるまる週1時間分削るのは難しいので、削れそうなところを少しずつ削った、というわけです。
ただし、5日制のせいばかりとは言えません。前の指導要領から35で割り切れない時間数が出ているように、割り振りがだんだん難しくなっていた面もあったのです。
どの教科も授業時間を増やしたいし、減らしたくないというのが本音ですが、1年間の総授業時間数には限りがあるので、年間をとおして時間数を分け合う苦肉の策が生まれたわけです。

次期の指導要領については今のところ、国語、社会、算数・数学、理科、保健体育、英語の授業時間数を増やす方向で検討されています(学年によって違いますが)。問題は、そうでない教科です。
たとえば、現在は小学5・6年生で年間50時間となっている音楽や図画工作は、はたして35時間となるのか、70時間となるのか、はたまた別の時間を設定するのか。今後の論議を待たなければなりません。
ただ、最近は「ハッピーマンデー」で月曜日の授業がつぶれることが多くなるなど、単純に曜日に従うだけでは授業がしづらくなっているのも事実です。柔軟な時間割を組むということも学校の「知恵」として、今後もうまく活用していってほしいものです。

<参考>
各教科等の授業時数(学校教育法施行規則・別表第一、第二)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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