何事にも熱中しない孫について[教えて!親野先生]

私は、子どもたちが成長する過程で、この能力が削ぎ落とされてきているのではないかと思います。
この能力は、もともと子どもたちにあったものなのですが、育てられるどころか削ぎ落とされているのです。

受験、受験でやってきた人たちが、特にこの能力を削ぎ落とされてきているのではないかと心配です。
というのも、自分がやりたいことをやっていたら受験勉強ははかどらないからです。
中学受験が加熱している現状を見ると、これが小学生のうちから行われるケースが増えているのではないかと心配です。
小学生のころから、自分のやりたいことをやることができないのです。
黄金の子ども時代は、もはや望めないのでしょうか?

ある小学生がテレビでシルクロードの番組を見て、とても感動しました。
何千年にもわたる歴史と文化の宝庫であるシルクロードに、すっかり魅了されたのです。

特に、砂漠のミイラや埋蔵品に興味をかき立てられました。
そして、それをきっかけにシルクロードに関するいろいろな本を読み始めました。
ところが、その子は中学受験をすることになっていました。
もちろん親が子どものためと思って決めたことです。

その子は、シルクロードの本を読むことを禁じられ、受験勉強に専念させられました。

「まったくこの子はミイラの写真ばかり見ていて、いつになったらやる気が出るのか?」というわけです。
小学生の子が一番熱中していたことを禁じられ、1年間我慢して受験勉強しなければなりません。
中学校に入れば入ったで、すぐ高校受験が視野に入ってきます。
そして、大学受験で就職試験というわけです。

これでは、自分がやりたいことを見つけて熱中する能力が育てられるはずがありません。

そして、見事に就職した暁には、会社の上司からこう言われます。
「君はこの会社で何をやりたい? 自分のやりたいことを明確にもっている社員が新しいプロジェクトを作れるんだよ」。
「この雑誌で君がやりたい企画は何かな? 他誌がやっていない斬新なもので、君が全力でやってみたいものを1週間以内に3つ提案しなさい」。

それまで、親にレールを敷かれ、「こっちに行きなさい」「これをやりなさい」と言われ続けてきたのです。
ずっとそうやって育ってきたのです。
それをいきなり、「何をやりたいの?」と聞かれても困ってしまいます。
そういう能力が育っていないのですから、どだい無理な話です。

私は、自分がやりたいことを見つけて熱中する能力を、子どものころから育てることが非常に大切だと思います。
この能力は、テストや成績で目に見える数字として表れてくるものではありません。
つまり、数値化できない能力なのです。
別の言い方をすれば、見えない学力なのです。

でも、この数値化できない能力が、長い人生でじわじわ効いてくるのです。
このことをぜひ頭に入れておいてほしいと思います。
そして、子どもが今熱中していることにもっと熱中できるようにしてやってほしいのです。
ほめてやったり、一緒にやってみたり、必要な物を用意してやったり、いろいろな方法で環境を整えてやってください。

大人の手助けがないと、子どもはそれをほんの少し得意なことにはできますが、それ以上にはできません。
でも、大人の手助けがあれば、子どもはそれをすごく得意なことにできるのです。
そして、それによって、大いに自信をもつことができます。
自分に自信がつけば、ますますいろいろなことに挑戦していくことができます。
毎日を明るく楽しくいきいきと生きていくことができます。

自分がやりたいことを見つけて熱中する楽しさを味わい、その能力を育てることができます。
それは、生きる喜びであり、人生の喜びそのものなのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
じいから孫へさんとお孫さんに幸多かれとお祈り申し上げます。


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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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