何事にも熱中しない孫について[教えて!親野先生]

 

孫は今、5歳ですが、母親は「何事も熱中しないので困る。もう少し熱中してひらがな・数字くらい熱心に覚えてくれればいいのに」と、心配しているのです。爺の立場で「そんなに心配しなくてもいいよ」と言ってはいるものの、心配なことには違いがないので迷っています。(じいから孫へさん)

 

【親野先生のアドバイス】

じいから孫へさん、拝読いたしました。

「子どもにやる気がない」「熱中しない」「自分からやらない」という話は、実によく聞きます。
今現在も、同じことで悩んでいる親が、どれくらいいるかわかりません。
「うちの子、本当にやる気がなくて……。一体いつになったらやる気を出してくれるのかしら……」
「どうしたら子どものやる気が出るのでしょうか?」
こういう質問を何度受けたかわかりません。
子育て雑誌にも、「今すぐ子どもがやる気になる10のポイント」「子どものやる気を引き出す親の言葉かけ」などというタイトルが並んでいます。

でも、私は、本当にやる気がない子や何にも熱中しない子には会ったことがないと言いたいと思います。
これは本当です。
どの子も、何か必ず自分のやりたいことはあるのです。
何もない子など、いるものではありません。

ただ、問題は、それが親の価値観に合わないものであることが多いということです。
庭の片隅でダンゴムシ探しに熱中したり・・・・・・。
ごみのような物を使って、わけのわからない物を夢中で作ったり・・・・・・。
友達と時間を忘れて遊びまくったり・・・・・・。
自分の空想の世界に浸りきってボーっとしていたり・・・・・・。

こういうことに熱中していても、親はそれをやる気があるとは評価しません。
そんなことより、フラッシュカードや知育ドリルに熱中してほしいのです。
ピアノ、そろばん、その他の習い事に夢中で取り組んでほしいのです。
ご相談のケースでも、「もう少し熱中してひらがな・数字くらい熱心に覚えてくれれば」とあります。

でも、そのような、親が望むことに都合よく熱中する子はそうそういません。
もし、そういう子がいたら、かえって心配です。
その子は、もしかしたら、自分でやりたいことを見つけられないのかもしれません。
「やりなさい」と言われたことはがんばってやるけど、自分からやりたいことを見つけられないのかもしれません。

自分がやりたいことを見つけて熱中する能力がある子は、親が提案するものに興味を示すはずなどないのです。
この、自分がやりたいことを見つけて熱中する能力は、人が長い人生を生きていくうえでとても大切なものなのです。

でも、今、この能力が育っていない大人が増えているようです。
というのも、私は、いろいろな立場の人から同じような嘆きを再三聞いているからです。

ある雑誌の編集者が言っていました。
自分からやりたい仕事をもってきたり、新しい企画を立てられたりする編集者が少ないそうです。
上司に言われたことは能率よくこなせるのですが、独創的な新企画は思いつけないそうです。

著名な人事コンサルタントである城繁幸さんからも、まったく同じ話を伺ったことがあります。
企業は、自分でビジネスや企画を立ち上げられる人を欲しがっているのに、そういう人がなかなかいないそうです。
偏差値がトップレベルの大学を出てきた人でも、なかなかいないそうです。

雑誌の編集や企業の仕事のことを持ち出すまでもなく、そもそも自分の人生を生きていくうえで、自分のやりたいことを見つけて熱中する能力がないというのはとても寂しいことです。
一体全体、何のために、また、誰のために生きるというのでしょう?
そもそも一体誰の人生なのでしょう?

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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