子どもが素直に謝らないときには、理由がある?![教えて!親野先生]
- 育児・子育て
子どもがお友達を叩いてしまったときなどに、素直にすぐ謝れない姿を見ると、保護者のかたは心配になることがあるかもしれません。お子さまが謝らないのには、もしかしたら理由があるのかもしれません。
謝るべきときに、ちゃんと謝れる子にするにはどうしたらよいのでしょうか? 教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
【質問】素直に謝れる子にするにはどうしたらいいのでしょうか?
長男が、先日友達を叩いたのですが、なかなか謝りませんでした。弟のおもちゃを取って泣かせてしまったときも謝りませんでした。素直に謝れる子にするにはどうしたらいいのでしょうか?
(きなこさん:小学1年生男子)
親野先生からのアドバイス
拝読しました。
親としては我が子が素直に謝らない姿を見ると心配になりますよね。
とはいえ、子どもが謝らないのにも必ず何らかの理由があります。
たとえば、次のようなことです。
1,納得していない
友達を叩いたことはいけないことですが、もしかしたら先に友達のほうから叩いてきたのかもしれません。
あるいは、非常に嫌なことを言われたとか、されたなどの理由があるのかもしれません。
このように本人が納得できていない場合は、当然謝る気になれません。
2,過去に何らかの経緯がある
自分が悪かったとわかっていて、謝らなければならないこともわかっているのに、それでも謝れないときがあります。
それは、過去にその子との間で何らかのトラブルがあって、それがまだ消化しきれていない場合です。
3,悪かったと思っていない
自分がしたことが悪かったと思っていない場合は、当然謝る必要性を感じません。
たとえば、弟のおもちゃを取ったとのことですが、もしかしたらお兄ちゃんのほうは取ったという認識がなかった可能性もあります。
4,自己肯定感が低い
自己肯定感が高い子は、何かの件で謝ってもそれで自分への信頼が揺らぐことはありません。
ですから、謝るべきときにはちゃんと謝れます。
でも、自己肯定感が低い子は、謝ることで自分が負けたように感じたり、よけいに自己肯定感が下がるように感じたりするので、謝れないことがあります。
主にこのような理由が考えられるわけですが、では、どうしたらいいのでしょうか?
どの場合にも、とにかく最初に子どもの話をしっかり聞いてあげることが大事です。
そのためには、子どもが「だって○○なんだもの」と言ったら、「そうなんだ。それは嫌だったね」というように、共感的に聞いてあげましょう。
それをしないで、「言い訳しない。悪いものは悪い」「そんなの理由にならないでしょ」「あなたお兄ちゃんでしょ。弟の気持ちを考えなきゃダメでしょ」などと、すぐ否定したりお説教を始めたりしてはいけません。
親が共感的に聞けば、子どもは話しやすくなりたくさん話すことができます。
もちろん聞いている中で、「そんなことないでしょ。あなたのほうが悪いでしょ」と言いたくなることも出てくるでしょうが、それは言わないで、まずはとにかく話のすべてに共感してあげてください。
また、子どもによっては、自分の気持ちや考えをうまく話せないこともあります。
その場合は、「このおもちゃで遊びたかったの?」と聞いてあげたり「このおもちゃで遊びたかったんだね」と代弁してあげたりしてください。
子どもは、親が自分の気持ちに共感してくれれば、気持ちが満たされて安心します。
また、気持ちをわかってくれた親に対する信頼感も高まります。
そうなったところで、「じゃあ、弟はどう思ってたかな?」「自分はいけないところはなかった?」「お兄ちゃんはどうすればよかったと思う?」と聞いてみましょう。
そうすれば、子どもは既に自分の気持ちがわかってもらえたという安心感があるので、素直な気持ちで振り返ることができるようになります。
そして、「弟もこれで遊びたかったと思う」「ぼくから叩いたのがいけなかった。謝ればよかった」「これからは先に弟に遊ばせてあげる。だって、ぼくお兄ちゃんだもの」などと言えるようにもなります。
もちろん、このような対応を一回すればそのあとは必ず謝れるようになるという単純なものではありません。
何度も同じことを繰り返す必要があると思います。
でも、それが子どもというものです。
とはいえ、親がこのような共感的な対応を心がけていれば、子どもは間違いなく望ましい方向に成長していってくれます。
なお、4の自己肯定感が低い場合については、日頃から子どもの自己肯定感を高めるように接することが必要です。
たとえば、次のようなことを心がけてみてください。
▼「また○○してない。○○しなきゃダメでしょ」などの否定的な言葉をやめる
▼子どもががんばったことやちょっとした成長をほめるなど、肯定的な言葉を増やす
▼「大好きだよ」「あなたはママとパパの宝物」「生まれてくれてありがとう」「毎日一緒にいられてうれしい」など、子どもを無条件に肯定する言葉を贈り続ける
▼スキンシップ、タッチケア、親子じゃれつき遊びなどを増やす
▼子ども自身が好きなことややりたがることを応援して熱中体験させる
▼子どもががんばっている写真や親子写真・家族写真を、目につくところに貼っておく
このようにして、日頃から子どもの自己肯定感を高めることを心がけてください。
自己肯定感が高まっていけば、謝るべきときにちゃんと謝れるようになります。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。
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