親野先生に聞いた!やらなければいけないことを自分から始められるようになる簡単な2つの方法

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宿題があるのになかなか始めないので寝る時間が遅くなる、前の日に用意しないから朝の支度が毎日バタバタ、何度も声をかけて、だんだんイライラ……。親が促さなくても子どもが自分から始めてくれたらうれしいのにと思う場面があります。子どもが自分から動けるようになるために今できることを、教育評論家の親野智可等先生に伺いました。

この記事のポイント

いきなり「自分から始める」のは難しい

宿題や片付け、明日の支度など、子どもの生活の中で、やらなければいけないことはいろいろとあります。早めに済ませたほうが安心だし、あとの時間も有意義に過ごせて気が楽になるはず。だから「早くやりなさい」「まだ始めないの?」などと促すこともあるでしょう。理想をいえば、言われる前に始めてほしいと思いますよね。けれども、実際には先にやりたいことをして、やるべきことは後回しにする子どもが多いのです。

多くの子どもは、やらなければいけないことはわかっていて、やる気もあります。そして「あとでやるからいい」「きっと問題なく終わるだろう」と考えています。宿題を始めてみたら思ったよりも時間がかかってお風呂に入る時間がなくなるとか、片付けを後回しにしているうちにさらに物が増えて大変になるといった先々のことはまるで見えていません。そのうえで、今は気が乗らないという気持ちを優先させているのです。

ですから、いきなり「親に言われなくても自分から始めてほしい」と思うのは子どもには荷が重い話です。大人が先の見通しを持たせてあげたり、面倒臭い気持ちを軽くする方法を教えてあげたりする必要があるでしょう。そうして「早めに済ませておくと安心だ」「あとが楽になってよい」と繰り返し実感することで、だんだん自分から積極的に始められるようになっていくでしょう。

見通しを立てて選択させよう

「あとでやるつもり」という子どもを動かすには、後でやるとどうなるか、今取りかかるとどうなるかをイメージさせ、どちらがよいか選択させる方法が効果的です。子どもは大人が思うほど先の見通しを立てていません。なるべく具体的に比較できる選択肢にして、ホワイトボードなどに書き出してみてください。文字にすると、子どもの頭に入りやすく、選びやすくなり、比較することで今か、あとかを決めることができるのです。
選択肢の例をいくつか挙げましょう。

●先に宿題をやって、夕食後はのんびり好きなことをする
●今は好きなことをして夕食後に宿題をする

●今から家族と温かい出来立ての食事をする
●今は好きなことをしてあとで一人で食事をする

●今すぐ片付けるならお母さんが手伝ってあげる
●あとでもいいけれど、一人でやる

●塾から帰ってから宿題する。寝るのが遅くなっても終わらせる
●塾に行く前に宿題をして、帰宅後はゆっくり好きなことをする

選択肢をつくることで、子どもには「自分で選んだことだから守ろう」という気持ちが生まれます。多少つらい思いをすることがあるかもしれませんが、それも次につながる学びになるでしょう。親が子どもの選んだことを尊重する姿勢も大切です。そのためには「先にやれば、ご褒美をつける」など、親の思惑で明らかな差をつけるのはよくありません。こうした選択肢では、子どもも自分で選んだという気持ちになりにくく、守る気持ちも半減します。

ハードルを下げてエンジンをかけよう

さて、いつやるかを決めても、サッと始めることができない子もいるでしょう。そういう時、「やるって言ったでしょう」「もう信用しないわよ」などと言っても、子どもはつらくなるばかりです。子どもの背中を押すには、まず共感することです。「宿題って始めるまでが大変なんだよね」「わかる。私も宿題嫌だったなあ」など、自身の経験や子どもの気持ちを代弁して伝えてみてください。すると子どもは自分のつらい気持ちをわかってくれたという信頼感を抱き、心がオープンになって親の話が耳に入りやすくなります。

共感して子どもが聞く耳を持ったら、次にこんな提案をしてみてください。
「問題を読んであげるからやってみよう」
「ヒントを出してあげようか」
「とりあえず1問だけ(半分だけ、5分だけ)やろうか」
「まず宿題を全部机に出してみよう」
これは取りかかりのハードルを下げるための提案です。内容はお子さんに合わせて、このくらいならできそうだ、やってもいいなと思えるものにしてください。

大人でも、少し手をつけ始めると、エンジンがかかって集中できたり、一気に終わらせてしまえたりすることがありますよね。子どもも同じです。少しの工夫で最初のハードルを下げてみると、気持ちを課題に向けやすくなります。取りかかりやすくする方法が見つかれば、その方法を使って自分の気持ちをコントロールし、決めた時間に始めることもできるようになっていくでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

大人でも、先延ばしにしたくなることってありますよね。でも、早めに手をつけないと思わぬ問題が出てきたり時間がなくなって苦しんだりするかもしれないという先の予測ができているから、面倒でも取りかかることができます。見通しを持つ、選ぶ(行動を決める)、ハードルを下げる、こうした工夫でうまくいく経験や、先に終わらせてスッキリした、取り組みやすくて始めてみたら楽に終わったなどの実感が、自分から取り組むための知恵や経験になるのですね。

プロフィール


親野智可等
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・『子育て365日』(ダイヤモンド社)
・『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)


長年の教師経験をもとに勉強法・家庭教育・親子関係などについて具体的に提案。
Instagram、Threads、X、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」などでも発信中。ドラゴン桜の指南役としても著名。『子育て365日』『親の言葉100』などベストセラー多数。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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