通学路の安全対策は大丈夫? 知っておくべき子どもの被害が多い4つの場所と、防犯のポイント

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通学路には、交通事故や犯罪に繋がりかねない危険が潜んでいるもの。子どもは慣れているから大丈夫、明るい道だから大丈夫と甘く考えてしまうこともあるので注意が必要です。子どもの意識と行動を変え、通学路に潜む危険を避けるためにはどうすればよいのか、安全インストラクターの武田信彦さんにお話を伺いました。

この記事のポイント

犯罪被害が発生する意外な場所ーー防犯対策に聖域を設けない!

子どもの犯罪被害が多い場面として、どのようなものがあるかご存知でしょうか。私も助言を務めた警察庁「犯罪被害等防止マニュアル」(令和2年公開)では、被害の調査等を元におもに4つの場面が挙げられていますが、そのいずれもがとても身近な場所となっています。

子どもの犯罪被害が多い4つの場面

1 道路

 大通りから一本入った住宅地や、片側が田畑など人通りや人目の少ない路上で、声をかけられる事例が発生しています。

2 駐車場・駐輪場

 車内で待ちぶせをしたり、犯罪を計画する者が対象者を物色をしたりして、声をかける事例があります。

3 公園

 子どもや人が多いとはいえ、遊具や木の陰など見通しの悪い場所を利用して、声をかけるケースなどがあります。

4 集合住宅の共用部分

 自宅まですぐだと気もゆるみがちであるため、住人のふりをして後をつけてきた人にエントランスや廊下で声をかけられる事例があります。

いわゆる「公共空間」のみならず、集合住宅の共用部分など「私的な空間」に近い場面でも被害が発生している点は特に注意が必要です。マンションの廊下や外階段のみならず、自宅の玄関付近でも犯罪被害は起きているのが現状です。

そのため、私が特に強調したいのは「防犯対策に聖域を設けない」ということです。基本的に「ここは大丈夫」「周囲の人が見てくれるから安心だろう」といった線引きはNG。一方、「この道は危険だ」といった指摘も、「あちらの道は安全」と逆説的に聖域を設けることにつながるため注意が必要です。子どもたちが行動するあらゆる場面で犯罪リスクは発生することを理解し、常に防犯対策を忘れないことが求められます。

また、これから紹介する全ての内容にも当てはまりますが、防犯には「正解」がないので、「答え」としてではなく、あくまで「ヒント」として認識するようにしてください。

子ども自身の防犯力を高めるだけでは不十分!子どもだけになる瞬間をいかに減らせるかを考えよう

通学路において、もっとも注意が必要な場面は「子どもだけになる瞬間」です。

子どもが誰にも見守られないエリアのことは「空白地帯」と呼ばれるようになりました。子どもの防犯対策としては、いかに空白地帯を作らないかが最重要。もともと子どもだけで行動する機会が多い日本では、防犯ボランティアや学校安全ボランディアといった見守りが活躍くださっている一方で、昔ながらの商店街や近所付き合いといった潜在的な見守りが減っているため、「空白地帯」は残念ながら増えているのが現状です。

子どもを狙うわいせつやいたずら、悪質な声かけなどを行う者(私は「犯罪原因を抱えた者」や「犯意」と表現します)は、「警察に捕まりたくない」「(通報されるから)人に見られたくない」という意識が強い傾向にあるものです。そのため、子どもだけになる瞬間のリスクが極めて高いのです。

「子どもが複数いれば安全性は増すのでは?」との指摘もあるかと思いますが、子どもが複数でも犯罪被害に遭遇しているケースがあります。やはり大人の付き添いや見守りの目をいかに増やせるかを考えることが最善の防犯対策といえます。

子どもの防犯対策としては、

1)保護者など身近な大人による付き添い
2)地域の見守り・助け合い
3)子ども自身の防犯力を発揮する

の3種類がありますが、1)→3)につれて、子どもが誰にも見守られないエリア、いわゆる「空白地帯」が多くなります。本来は、3)子ども自身の防犯力の発揮 が必要にならないように身近な大人や地域など社会全体での取り組みが欠かせません。とくに、身近な大人の付き添いこそ一番の防犯対策といえるものです。しかし、共働きの増加や多様な保護者のライフスタイルを踏まえると、常時付き添うことは難しい現実があるでしょう。

とはいえ、1)大人の付き添い 2)地域の見守り・助け合い の取り組みがないまま、3)子ども自身の防犯力の発揮 にばかり力を入れるのは本末転倒。それだけでは、リスクを最小化することはできません。通学路の付き添いが難しい場合も、玄関前の見送りや、集団登校の待ち合わせ場所までの部分的な付き添いも効果的です。防犯バリアを広げるために、保護者同士で地域の子どもに目を向けることも忘れないようにしたいものです。

子どもに教えるべき、防犯のための心がけ7つ

子ども自身の防犯力を高める際には、危険に遭った際の「対処」の準備だけでなく、危険を回避する「予防」の習慣を身につけさせることが重要です。次の7つを心がけるようにしましょう。

1 ひとりにならない

 大人や友達と行動することが基本。万が一、一緒に行動できる人がいなくても、人通りが多い道を選ぶなど、まわりに人がいる環境を選ぶよう心がけましょう。

2 ひとりになったら観察力を発揮する

 ひとりになった瞬間から「自分で自分を守る」力を発揮しなければいけません。まずは、自分の近くにいる人や車、バイク、自転車へ意識を向ける習慣が重要です。観察力を活かすことで対処力が発揮しやすくなります。また、不安を感じたら防犯ブザーを手に持ったりするなど、警戒心・抵抗力を持っていることをアピールすることで危険を遠ざける効果が期待できます。

3 人と会ったら、触られない距離を取る

 人と接近する場面では、すぐに手が届かない距離を保つことで、触られる、つかまれるなどを予防することができます。あいさつすることはよいと思いますが、近づきすぎないよう適切な距離をとりましょう。子どもたちを見守る側にも求められるマナーです。

4 誘いやお願いごとはしっかり断る

 「どこどこの場所まで連れて行って」「お父さんが事故だから車に乗って」「お菓子をあげるよ」など、お願い事や誘い文句を投げかけられたら、「できません!」の一言で断りましょう。体だけでなく、心にも距離感が必要です。

5 怖いと感じたらすぐに逃げる

 「逃げる」だけでなく、子どもの行動範囲の中で公共施設やお店、子ども110番の家など「助けてくれる人がいる所」を知っておくことも大切です。普段から子どもと歩く際など「ここから、一番近くで助けてくれそうな人はどこにいる?」など投げかけることで、実践的に練習しておきましょう。

6 たすけてを伝える

 子どもだけの力には限界があります。周囲に助けを求める練習もしておきましょう。大きな声での「たすけて!」、さらに、逃げ込んだ先で助けを求める、不安を感じたら身近な大人に伝えることも身を守る力といえるものです。

7 防犯ブザー

 危険を知らせ、逃げることを助けてくれる大事な道具です。いざという時に使えるよう、あらかじめ使い方を練習しておきましょう。電池の確認も忘れずに。

子どもの防犯対策は「ひとりにならない」ことが基本中の基本ですが、100%実現することはなかなか難しいものです。そのため、上記2「ひとりになったら観察力を発揮する」をしっかり実現するためにも「ひとりになった」と気づくことが非常に重要。私のセミナーでは、「ひとりになったら、安全スイッチオン!」などと意識づけをしています。心の中の安全スイッチをオンにして、観察力を働かせるイメージを持たせてあげましょう。

子どもの観察力を高め、防犯力を向上させるためのトレーニングとは

「観察力」を発揮するべき機会は想像以上に多いものです。公共空間はもちろんのこと、私有地内でのエレベーター、外階段、そして、自宅玄関ドアのカギを開ける瞬間まで、観察力を発揮して周囲に人がいないか確認するようにしましょう。「玄関ドア、内側から鍵をかけるまでが外」という意識が大切です。

なお、「観察力」を発揮することが重要とはいえ、平行視野が狭い子どもには、体全体をつかった確認が求められ、大人よりも難しいと感じるもの。そのため、遊びの中で鍛えていくことがおすすめです。特に有効なのが「だるまさんがころんだ!」で振り返る動きであり、以下の効果が期待できます。

・素早い対処ができるようになる

 急に近づいてくる、ずっとついてくるなどの不審な行為に気づきやすくなり、逃げる、助けをもとめるなどの対処力を発揮しやすくなります。

・抵抗力があることを示すことができる

 素早い動きや、警戒心を示すことで「声を出される」「逃げられる」など、悪意や犯意がある者の行為を諦めさせる効果が期待できます。

また、子どもの観察力を高め、防犯力を養成していくためには、注意事項を伝えるだけの座学でなく、実際に声や体をつかって練習を行う、通学路を歩いて観察するなどの体験型学習が役立ちます。お子さまと一緒に通学路を歩きながら、想定される危険について話をすること、もしもの場合にどこに逃げるかを確認することなどを親子で行っていきましょう。子どもと大人の目線で確認することで、お互いに発見が増えると思います。

まとめ & 実践 TIPS

防犯対策で大切なことは、ここは危険だけど、ここは安心といった聖域を設けず、あらゆる場面でリスクはあるという前提で対策することが重要です。そして、子どもの防犯で何より大切なのは「ひとりにさせない」「ひとりにならない」こと。とはいえ、100%実現することは難しいこともあるでしょう。そのため、子どもの防犯力を高める7つの心がけを伝えること、また、大人の付き添いや見守りの目を増やし、空白地帯を作らないようにする取り組みも忘れないようにしていきましょう。また、危険なことばかりでなく、地域には、見守り、助けてくれる人たちが大勢いることも伝えてあげてください。

警察庁「犯罪被害等防止マニュアル子ども編」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/keihatutu_ru/kodomo.pdf

プロフィール

武田信彦

武田信彦

うさぎママのパトロール教室主宰
安全インストラクター
国際的な犯罪防止NPOを経て「市民防犯」を提唱する講師として活動中。全国の自治体、警察、教育現場などから多数の講師依頼を受けている。また、中央省庁においても助言を務めるなど市民防犯のパイオニアとして活躍中。著書に「活かそうコミュ力!中高生からの防犯」(ぺりかん社)、「SELFE DEFENCE 『逃げるが勝ち』が身を守る」(講談社)など。

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