質問しても答えない子ども、「信じて待つ」だけで本当にいいの?[やる気を引き出すコーチング]

「コーチングでは、質問をして、子どもが自分で考えるよう促すんですよね。それはわかるのですが、何度質問しても、『わからない』と言います。それに対して、否定するのではなく、『そうなんだね。わからないんだね』と受容し、信じて待つことが大事ということもわかります。でも、それだと、『わからなくてもいいんだ』と思って、考えることをあきらめる子どもになってしまいませんか?『信じて待つ』だけでいいのでしょうか?」というご質問をいただきました。
投げかけても返って来るものがないと確かに不安になりますね。このような場合、皆さんはどうしたらいいと思いますか?

■「質問」は投げかけることに意義がある

以前、お母さんと一緒にコーチング講座に通っていた小学校2年生のお子さんがいました。本人は来たくて来たわけではなく、一人で家に置いておくわけにいかないと思ったお母さんに連れてこられたという状況で、まったく気が進まない様子でした。
「今日はどんなことを学びたいですか?」と私から質問されて、何を聞かれているのかわからないという顔をしていました。「わからない」としか返ってきません。通常は、先生のほうが学ぶことを教えてくれるもので、「何を学びたいと聞かれても・・・」という気持ちだったようです。

次の講座の時も、同じように質問をしましたが、答えが返ってくることはありませんでした。それでも、私は、毎回、大人の参加者の皆さんにも、この子に対しても、同じように質問をしていました。こちらが準備したカリキュラムはもちろんあるのですが、毎回、自分なりのテーマを持って参加してもらいたいと思っているからです。
5回目の講座の時だったでしょうか。「今日はどんなことを学びたいですか?」と質問すると、「友達の話を上手に聴く方法」と答えました。「今日、学校で急にそう思った」と言うのです。私はこれが質問の効果だと思っています。その場で答えが返ってこなくても、投げかけた時点で、子どもの意識は一瞬でもそこに向かいます。折々に、意識を向け続けているうちに、自分の答えを見つけられるようになっていきます。

子どもの「わからない」を真に受けてはいけません。「わからない」のと「考えがない」ことはイコールではありません。決して、「やる気がない」わけでもありません。自分の考えを質問される体験があまりに少なく、考えることに慣れていないだけです。

■「方法は一つではない」と捉え大人が探求し続ける

もちろん、「信じて待つ」ことはとても大切な姿勢ですが、何もしないで「放っておく」のとは違います。この子が自分で考えてみたくなる方法を、大人のほうが自分で考え続けることをあきらめてはいけません。方法は一つではありません。子どもによって効果的な関わり方は違います。
どんな質問だと考えてみようと思うのか、いろいろと投げかける中で、試してみたら良いでしょう。例えば、「今日はどんなことがおもしろかった?」、「この中で一番好きなものは何?」と、何気ない日常会話の中で、自分の興味関心に意識が向くような質問をしてみたり、「これについて迷っているんだけど、あなたはどう思う?」、「どっちがいいと思う?教えて」とアドバイスを求めたりする方法もあります。

質問に限らず、「◯◯について、すごくよく知っているんだね」、「◯◯の話をしている時はすごく楽しそうだね」など、日頃、観察していて感じたことを伝えるとか、「◯◯がすごく得意だね」、「そこがあなたの強みだと思うよ」などの承認の言葉を通して、自分のことを考えてみるきっかけを作るなどの方法も考えられます。
大人が、「方法は一つではない」という姿勢で探求し続けていると、子どもも自ずと探究心が芽生え、考え始めるものです。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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