忙しくても!子どもとの時間を大切にする方法
育児に仕事、家事と、毎日忙しいワーキングママ。「小さな子どもを保育園に預けっぱなしでいいのかな」「ふれあう時間が少ないから、子どもとの絆が弱くなるかも」と不安に思うことも多いのではないでしょうか。
保育・子育ての専門家であり、NHK Eテレ「すくすく子育て」でも活躍されている井桁容子先生に、短い時間でも子どもとの絆を深める方法についてお話をうかがいました。
子育てはママだけではできない
人間の子どもというのは、親だけで育てられるものではないんですね。人間は、体だけではなく心を育てていかないと「人」として成長していけないんです。それには、心地いい環境で、自分を好きでいてくれる、いろいろな人と目を合わせて話すこと。こうして、はじめて心が育っていくんですね。
3歳くらいまでは、自分を気にかけてくれている人たちに囲まれていると、「自分はいろいろな人に愛されている」と子どもは実感していくでしょう。その環境のひとつが保育園なので、子どもを保育園に入園させることに罪悪感を持つことはまったくないのです。
ただ、入れる保育園は、しっかり見きわめてほしいですね。通園を含め、子どもに無理をさせないか、どんな保育をしているのか、何より子どもにとって心地いい場所になるのか……などは、入園前に実際に見に行って、リサーチしてほしいところです。もし妊娠中や育休中のかたでしたら、今のうちから「保活」して探しておきましょう。
でも、保育園に入れたから、子育ては全部、園におまかせ!というのは違います。子どもにとって、おうちのかたは「心の安全基地」的存在なのです。
1日10分、本気で子どもと遊ぶ
働くママは、子どもとふれあう時間がとれないことにお悩みかもしれません。でもね、絆は時間の長さより「濃さ」が大切なんです。
一日中、子どもとベッタリ一緒の空間にいても、親がスマホばかり見ていたり、子どもにテレビを見せているだけだったりしたら、絆が深まることはないでしょう。たとえば、1日10分、何も考えずに、ただ子どもと本気で遊ぶ。これだけでもいいんです。その10分は、仕事のことも家事のことも考えず、スマホもいじらず、ただ子どもと遊ぶ、または楽しいことを共有するだけ。赤ちゃんの場合も、話しかけたり、目を合わせてやりとりをしてみてください。この濃密な時間で、子どもは「忙しいママが自分のためだけに時間を使ってくれた!」とわかるのですよ。
赤ちゃんでも、大好きな人と濃密に関わりたいと思うときもあるし、ひとりでいろいろなことを感じたり発見したりしたい時間も欲しいもの。ずっと離れず、関わっていたいと願ってはいないので大丈夫です。
この10分のふれあいタイムは、通園や入浴時間の中にも意識することができます。「子どもと心を共にする時間」という意識が大切なんです。10分、真剣に遊ぶと、結構意外な面白さに気づくことがあったり、子ども時代のことを思い出して懐かしい感覚がよみがえってきたりします(笑)。ママが「ああ、楽しかった! さあ、おふろに入って寝ようか」と自分も満足したことや、このあとの見通しを口にすると、子どもも満足するでしょう。
子どもも自分も笑っていられるように
毎日忙しいママに、私がおすすめしたいのは「切り替え」。たとえば、電車に乗った瞬間に「家」と「仕事」を切り替える。仕事をしているときは、一切、子どものことも家のことも考えないように心がける。逆に、子どもとふれあっているときは、一切ほかのことを考えない。「ママは今、ほかのことを考えているな」というのは子どもに伝わるものです。もちろん、ママがイライラしたり、疲れていたりするのも子どもは感じとって、同じようにイライラしたり、そんなママやパパに気兼ねをして自分の気持ちをためこんだりしてしまうのです。
どうしても、ふれあいタイムが持てない日は理由を子どもにわかりやすい言葉で、きちんと説明して「明日でもいいかな?」「土曜日に必ず……」と子どもに交渉したり、待ってもらったりすることがあってもいいのです。その代わり、約束は必ず守ること。時間にゆとりがなくても、気持ちにはゆとりを持つように心がけることは、“急がば回れ”です。
気持ちにゆとりを持つために大切なことは、困ったときに「助けて」と言えることです。心理学的にも、できるふりをする人よりも、助けを求めることができる人が、本当の自立した人だと判断されているのです。仕事でも育児でも、ゆとりをなくして気持ちが追いつめられる前に、保育園の先生でも家族でもいいので、周りの人に「助けて」と言ってください。
いちばん大事なことは、子どもが健康で安心していられること。そして、自分も子どもも、周りの人も家族もみんなが笑っていられることなのです。子育てに困ったら、子どもはもちろんですが、家族全員が笑えるにはどうしたらいいかと考えると、無理のない答えが見えてくると思います。
取材:こどもちゃれんじ