「がんばれ!」と言うだけでは動けない子どもにかける言葉[やる気を引き出すコーチング]

子どもを応援する気持ちでかける「がんばれ!」、「がんばって!」という言葉ですが、それで、子どもたちは本当にがんばれているのでしょうか。子どもの状況によっては、よりプレッシャーを感じてしまったり、自己肯定感が下がってしまったりということはないでしょうか。
「がんばって!」と声をかけたら、「言われなくても、がんばってる!」と言い返された、「もうこれ以上、どうやってがんばったらいいかわからない」と泣き言を言われたという保護者の方もいらっしゃいました。
「がんばれ!」に代わるより効果的な言葉はないものでしょうか?一緒にレパートリーを増やしてみませんか?

■「承認」の言葉かけ

少年野球のコーチをしているTさんが、アメリカのチームを視察に行った時に、とても驚いたことがあったそうです。
 日本のチームでよく耳にする言葉は、
「ボールをよく見ろ!」
「全力で走れ!」
「がんばれ!あきらめるな!」
と、すべてにおいて命令形の声かけです。ところが、アメリカ人のコーチから出てくる言葉は、
「Good job!」(よくやった!)
「Perfect!」(完璧だ!)
「You are No.1!」(君が一番だ!)
といった相手を認める言葉ばかりでした。たとえ、ミスをしたとしても、
「Nice try!」(よくトライした!)
と声をかけるのです。
 「子ども一人ひとりが、『自分がヒーローだ!』と感じられる言葉かけだと思いました。
あれから、私も『がんばれ!』は封印しました」と言っていたTさんが、最近かけている言葉は、
「順調!順調!いい感じ!」
「かっこいい!」
「よくチャレンジした!」
 こうした声かけをしていると、「以前よりずっと、子どもたちがイキイキしてきて、粘り強さが出てきました!」とのことです。

■自分と未来への可能性を引き出す言葉かけ

こちらは、家庭教師のAさんが、中学生の生徒さんによく使っている言葉です。テストの結果が思わしくないと、落ち込んでしまうタイプの生徒さんには、こういう言い方をしているそうです。
「以前、似たような問題で間違っていたところが、今回はできていたね」
と、成長を認めます。
「この問題ができたなんて、すごい!先生はびっくりした!」
と、できたところを認めます。
「まだまだ伸びしろがあるね!」
と、可能性を認めます。
「さらに、伸ばすための方法があるけれど、やってみる?」
と、打つ手はまだあることを伝えます。
「がんばれ!」とは一言も言いませんが、子どもは「よし!次こそ!」と思えます。「自分はまだまだいけるんじゃないか?」、「やれることがまだまだあるんじゃないか?」と自分と未来に可能性が感じられると、やる気が引き出されます。

■成功イメージが描ける言葉かけ

私のコーチ仲間のMさんが、高校生活最後の試合に臨む娘さんに、お弁当を渡しながらかけた言葉です。
「今日って、これから大会だったよね。お母さん、今朝、あなたが優勝する夢を見たよ。起きたら、もう大会は終わったんだと思ってしまったわ」。
この言葉に、娘さんはゲラゲラ笑いながら、
「お母さん、それ、超ウケる!おもしろすぎて、もう緊張が抜けてしまったわ!正夢になったらすごくない?」と言って出かけて行きました。結果は準優勝だったそうですが、過去最高の成果でした。
お母さん自身が、お子さんの成功を信じて疑わない気持ちが伝わってくるエピソードです。そこまで「あなたはできるよ」と信じてもらえたら、「よし!がんばろう!」と思えるのではないでしょうか。また、自分が優勝した時の姿を想像して、ちょっとワクワクする気持ち、「そうなったらすばらしいなあ」と思う気持ちは、チャンレンジに向かう原動力を確実に引き出します。

こうして考えてみると、「がんばれ」に代わる言葉はまだまだありそうですね。アンテナを立てて、さらに探してみませんか。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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