大人になった時に影響が?!子どものうちに自己肯定感を高めよう!
日本の子どもたちの自己肯定感が低いということが問題視されています。全国の公立小学校4~6年生、中学校2年生、高校2年生を対象とし、平成27年に行われた国立青少年教育振興機構の調査結果によると、日本の子どもたちの自己肯定感が年齢を追うごとに低下していることがわかりました。(※1)
今回は、幼児期~小学生の時期に育まれる自己肯定感について、ご紹介します。
自己肯定感とはなんだろう
自己肯定感とは「自分は大切な存在である」「自分はかけがえのない存在だ」といったような、いわゆる自尊感情のことです。
文部科学省では2017年6月に「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」を取りまとめ、子どもたちの自己肯定感の低さを改善するための環境づくりについて検討を行っています。
また、子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題の中で、自己肯定感の重要性や、学校、家庭・地域の役割などについて触れられています。(※2)
特に、乳幼児期から小学校高学年までの発達段階において重視すべき点は、十分な自己の発揮と他者の受容による自己肯定感の獲得、ありのままの自分を肯定し他者の価値観にとらわれないようにすること、自分の能力を認めていくということと述べられています。
自己肯定感は誰にでも備わっている感情であり、大切に育てていくことが重要です。家庭内での生活習慣や保護者との関わりとも関連しており、「自分は大切な存在である」と思えるかどうかは、保護者が自分のことを理解してくれること、賛成してくれること、また家族で過ごす時間が多ければ多いほど育まれていきます。
教育の現場においては、自己肯定感尺度といった指標もあるため、これらを利用し教育に生かしていくことが期待されています。
自己肯定感が低いとどうなるの?
日本の子どもたちの自己肯定感が世界の子どもたちと比較して、低いということに触れてきましたが、一体なぜなのでしょうか。(※3)
日本の子どもたちの自己肯定感が低いことの要因として、謙虚さを大切にするといった考え方や個人主義的な発想を良いこととしない国民性があると言われています。(※4)
そういった環境の中で子どもが成長していくと、さまざまな課題にぶつかった際に自分自身の考えを肯定できないために、不安や悩みが多くなってしまうのではないでしょうか。
成長していくにつれ、セルフイメージの描き方が変わってくるので、子どもの頃とはまた違った不安を感じたり悩んだりすることもあるかもしれません。
また、小さな頃から保護者など周りから否定されることが多く褒められることがなかったなど、認められた経験が少ない場合も、自分は大切にされていないという気持ちになり、自己肯定感が低くなるでしょう。自己肯定感の低さが原因で、性格的に飽きっぽい、比較することや他人の批判をする、疑いや不安などの感情をもつため攻撃的になってしまう、ということにつながります。
自己肯定感が高いと、何か変わるの?
自己肯定感が高いと、子どもたちにどのような変化が起こるのでしょうか?今までの日本の教育においては、子どもの弱みに着目することが通常でした。
例えば、「クラスで目立ちすぎるといじめられてしまう」、「他の子と比べて落ちこぼれない程度に頑張ってほしい」といったように、なるべく他と一緒であることを望む教育がなされていました。しかし、これらの発想を転換し、強みを生かす教育に変えていくことが重要なのではないでしょうか。結果的に、自己肯定感が高くなると人との交流が盛んになり、社会でも評価されやすくなるといった変化が起こります。
また、自己肯定感が低いと親や周りの価値観を元に目標設定がなされることが多かったのに対し、自己肯定感が高くなると子ども自身の目線で目標が立てやすくなり、さまざまな経験やチャレンジする機会が増えていきます。自己肯定感が高すぎることの弊害について心配される方もいるかもしれませんが、成長過程において自分を公正に評価できるようになるため、子ども時代の自己肯定感の高さを問題視する必要はほとんどないでしょう。
子どもの自己肯定感を高めてあげよう!
それでは、子どもの自己肯定感を高めるために、親ができることは何でしょうか。
いくつかのポイントをご紹介していきましょう。
・きちんと子どもと向き合う
忙しいと、ついつい子どもと会話することをおろそかにしてしまうことがあるかもしれません。しかし、子どもが話をしたがっているときは、その気持ちをくみ取り、きちんと向き合う時間を作りましょう。何か解決策やなぐさめの言葉が欲しいと思っているのではなく、ただ自分の方を向いて話を聞いてくれるというだけで安心感を覚え、結果的に自己肯定感につながっていくのです。
乳幼児に対しては、膝の上にのせて絵本を読み聞かせてあげてもいいでしょう。こういった一体感が安心感を育んでいきます。
また、絵本の読み聞かせから自己肯定感を育てることもできるでしょう。絵本は子どもが主人公になりきることで、成功体験や達成感を味わうことができます。
・子どもの考えを認めてあげる子どものとった行動には必ず理由があります。一方的に叱りつけるのではなく、きちんと考えを聞くようにしましょう。このように子どもの気持ちの整理をしてあげるだけで、自己肯定感の高い子に育っていきます。
・いつも味方であることを伝えてあげる
ときには、子どもがいじめにあったり、クラスで仲間はずれにされてしまったりすることもあるでしょう。そんなとき、子どもにも原因があると責めるのではなく、「いつも私はあなたの味方です」ということを伝えることが大切です。それだけでも、子どもは安心感を覚えるでしょう。
・些細なことでも褒めてあげる
悪いところを見つけて指摘する教育方針の保護者のかたも多いかと思います。しかし、それでは自己肯定感はなかなか育まれません。どんな些細なことでもよいので、十分に褒めてあげるようにしましょう。
例えば、朝起きて眠い目をこすりながらも「おはよう」と言えたら褒めてあげる、嫌がらずに自分で朝の準備ができたらまた褒めてあげるなど、当たり前のことでもいいのです。些細なことでもしっかり褒めることが大切になります。こうすることで、自然と自分に自信が持てる子どもに成長していくでしょう。
これらのポイントを意識するだけで、子どもの「自分は愛される存在だ」、「自分はそのままでも素晴らしい人間だ」という自己肯定感が育まれていきます。
自己肯定感を育てよう
子どもの頃に自己肯定感が育まれないと、大人になったときにさまざまな生きづらさにぶつかることになる可能性があります。
幼少期から自己肯定感を育んでいくと、大人になってからも自分に自信を持ってさまざまなことに挑戦していく意欲の高さや、何事にも積極的に取り組めるような前向きさ、社会性を育てることができます。ありのままの自分を受け入れてのびのびと育っていくためには、自己肯定感を育んでいくことが大切です。お子さまと自己肯定感を高める関わり方や教育を意識して向き合ってみましょう。
(※)参照サイト
(※1)国立青少年教育振興機構「体験の風をおこそう」運動
http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/105/File/01gaiyou.pdf
(※2)3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題:文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1283165
(※3)特集 1 自己認識|平成26年版子ども・若者白書(全体版) - 内閣府
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/tokushu_02.html
(※4)自己肯定感・自己有用感の考え方と育み方 ‐文部科学省 国立教育政策研究所
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/chousakai/dai1/siryou5.pdf